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1939年 ノモンハン29 軍をあざ笑う土建屋

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/12/06 18:51 投稿番号: [2095 / 2250]
辻正信著   「ノモンハン秘史」   毎日ワンズ
188〜189p


《 十一日以後は、疲労と消耗のためについに攻撃を中止し、

進出線に陣地を構築して、敵と睨み合ったまま滞陣状態に陥った。

満を持して放った矢ではあるが、ついに金的を射貫くことができなかった。


この戦況を速やかに軍司令官に報告し、新しい手を講じなくてはならぬ。

十日夜、師団長に別れ、ハイラルに引き揚げた。



兵站宿舎に数時間まどろんでいたが、隣室の騒ぎがひどくて寝つかれない。

土建屋が芸妓   (げいぎ)   を揚げて、酒池肉林の中に気焔を吐いている。

「戦争が起こったらまた金儲けができるぞ。

軍人の馬鹿どもが儲かりもしないのに、生命を捨ておる。

阿呆な奴じゃ……」

襖   (ふすま)   一重のこの乱痴気騒ぎを、ついに黙視することができなかった。



大人気ない話であるが、いきなりその室に入って、

何も言わず、数名のゴロッキ利権屋に鉄拳を見舞った。


兵隊が一枚の葉書で召集せられ、数年間北満の砂漠に苦しみながら、

故郷に残した老父母や妻子に、一円の仕送りさえできず、

血戦死闘の戦場で散ってゆく姿を思い、

その背後で戦争成金が贅を尽くしているのを見ると、

体内の全血管が爆発しそうになるのを抑えることができなかった。



これは単にハイラルの狭い範囲だけの点描ではなかろう。

いずれの戦争でも、血を流さずに、金を儲ける者がつきものである。》
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