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1938年11月4日 近衛声明を悪用する蒋介石

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/07/28 14:28 投稿番号: [1796 / 2250]
これは、長沙焚城よりも前の話、順番を間違えた。


児島襄著   『日中戦争5』   文春文庫
176〜178p


《 漢口の米総領事P・ジョスリンも、報告した。

「ソ連消息筋によれば、中国は現在の消費基準であと六カ月ぶんの弾薬を保有している。

他の外国筋および中国筋は、約八カ月ぶんだと述べている」

蒋介石自身は、十一月四日、長沙で英大使A・カーと会談したさいに、告げた。

「中国は、あと一年間は抗戦できる」

もっとも、その一年間も米英両国からの借款が条件になっている、

と蒋介石は、つけ加え、さらに、大使を凝視して強調した。



「もし、援助がなければ、中国は別の友人、たとえばソ連あるいは

日本にさえも求めざるを得ないだろう。

中国が日本と運命をともにすることになれば、

中国における日本以外の外国権益は、いっさい排除されることになる」

英大使カーの脳中には、その前日に発表された日本首相近衛文麿の声明が、うかんだ。

近衛首相の声明のうち、とくに注目されるのは、つぎの箇所であった。



「……帝国ノ冀求スル所ハ、東亜永遠ノ安定ヲ確保スベキ   新秩序ノ建設ニ在リ。

……固ヨリ国民政府ト雖モ、従来ノ指導政策ヲ一擲シ、ソノ人的構成ヲ改替シテ

更生ノ実ヲ挙ゲ、新秩序ノ建設ニ   来リ参ズルニ   於テハ、

敢テ   之ヲ拒否スルモノニアラズ」



この声明は、それが武漢攻略の直後に、その戦果を背景にしてのものであるだけに、

日本側の   「自信」   と   「強腰」   の表明とみなされた。

駐日米大使J・グルーは、 「新秩序」   宣言は、

これまでに日本も合意していた中国にたいする   「国際的姿勢」   である

門戸開放、機会均等の放棄を意味するものとみなした。

「新秩序は、日満支ブロック、いいかえれば、米合衆国、ソ連、英連邦に似た

経済・政治支配圏を東アジアにつくる政策の一部である」



国民政府への参加呼びかけは、かつての   「蒋介石ヲ対手トセズ」   方針の

修正であろうが、これはしきりにつたえられている   「呉佩孚工作」   の成功を

示唆するものではないか、と、米大使グルーは考えた。



  −だが、

英大使カーは、別の印象をうけた。

旧軍閥の頭領である呉佩孚は、国民政府外の存在である。

その呉佩孚をむかえ、北京の   「臨時政府」、 南京の   「維新政府」   という

日本の〝傀儡〟政権を統一して〝新中国政府〟を樹立しようというのが、

「呉佩孚工作」   である。



それなら、蒋介石・国民政府とは別のものであり、近衛首相が国民政府に

「参加」   を呼びかける必要はないのではないか……。

英大使カーは、あるいは近衛首相の声明は国民政府そのものとの

「和平接触」   を意味しているのではないか、と首をかしげた。



*   東亜新秩序の声明では、欧米を排除するとは、一言も言っていないのだが、

   蒋介石はこういう言い方をすることによって、日本がまるで欧米を排除し

   中国市場の独占を図っているかの如く、疑心暗鬼にさせています。
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