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『丸一洋行』 店主惨殺事件

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/02/02 18:48 投稿番号: [1428 / 2250]
児島襄著   『日中戦争3』   文春文庫    225〜226p


《九月三日、またしても日本人殺害事件が発生した。

現場は、広東省雷州半島の西方の北海市。

被害者は、同市第七区泰華鎮珠海中路第九十号の   『丸一洋行』   店主・

中野順三であった。



北海市には、八月二十四日、反蒋介石を主張する第十九路軍の一部、

フン照垣指揮の   「抗日救国軍第一師」   約千五百人が進駐し、

随行してきた学生約三百人とともに、 「打倒日本賊」 「打倒蒋介石漢奸」

などのビラをまき、市内要所にたむろしていた。



中野順三の店は、なかなかの盛業ぶりを示し、家族は第一、第二夫人、

男児四人、女児一人であった。

なぜ   『丸一洋行』   が対象になったかは不明だが、師長フン照垣は、

進駐してくると、商務局をつうじて立ち退き要求をくり返し、

中野順三も、やむなく承知して店じまいの準備をすすめていた。



すると、九月三日午後七時ごろ   ―

『丸一洋行』   に三十歳前後の男二人がはいってきて、

はじめは買物客の風情で店内を歩きまわっていたが、

店番をしていた中野順三の長男清に、いきなり拳銃をつきつけた。

「(ここは)   日本人ノ店ナルベシ」



拳銃をむけられた長男清は、二人の質問に答える余裕もなく、

「オ父サン」 「オ父サン」   と連呼しつつ、二階にかけのぼった。

二人は拳銃を発射した。その発砲音が合図であったらしく、

いずれも十七、八歳の青年四、五人が   「ジャック・ナイフ」   を

ふりまわしながら乱入してきた。



中野一家のうち、第二夫人は年少の男児三人をつれて外出中で、

店には中野当人のほかは第一夫人、長男清、長女千鶴子がいた。

第一夫人と長女千鶴子は、長男清のあとを追おうとしたが、

乱入してきた一味につきとばされた。

二階に殺到した一味は、食事中の中野順三におそいかかり、

猿グツワをして壁におしつけ、

ナイフで右胸部、腹部、頸部を刺して、殺害した。



長男清は、その間に二階の裏窓からとびおりて逃げ、

階段をはいのぼってきた長女千鶴子が、なかば気失しながら、

父親が刺殺される状況を目撃していた。》
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