第二次南京事件4 宝来館裡の悲鳴2
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2011/12/10 16:58 投稿番号: [1307 / 2250]
『もう一つの南京事件・日本人遭難者の記録』 田中秀雄編集・解説
芙蓉書房
33〜35p
《 余は無抵抗のいかに悲惨なるかを体験し、生来二十八年、
この時ほど自分が弱いものだと思ったことはなかった。
しかしこうなれば死を決して暴徒のなすままに天運を待つほかなかった。
そのうちに余らは外套、服、ワイシャツ、着ているもの全部をはぎ奪われ、
ズボン下一つきりになったが、暴兵は刻々に数を増すばかりで、
奪ってゆくもののなくなった腹立たしさに、室内の小道具類を片端から破壊し始め、
『百円出せば命だけ助けてやる』 とか、
『張作霖びいきの日本人は皆殺しだ、もう五十人殺された』 などと喚きながら、
一人の兵は一間余も間近からピストルを向けて余を狙撃した。
幸いにして弾丸は余のびんをかすめ、とびらを貫いた。
一緒の者四人既に生きた心地はない。
どうでもなれと観念のほぞを固めているうち、
兵隊に続いて潮の如き無頼漢の群衆雪崩れ込んで来て口々に我々を冷笑しながら、
家の中の品物を片ッ端から持ちだしてゆく。
めぼしい品物はもちろんのこと、後では畳、床板、便器、鉄瓶のかかった火鉢、
たんつぼに至るまで持ち出して、
部屋の中はまるで馬小屋同様のあばら家同然となってしまった。
余らは丸裸になってこの暴挙を眼の辺に眺めながら、どうなる事かと胸を痛めていると、
やがてどかどかと数人の兵が飛び込んできて、『貴様らは支那の土地に勝手に
家を建てる権利はない、早く出てゆけ、下で銃殺してやるから早くゆけ』
と言い捨てて余らを引きずり出した。
いよいよ最後の時が来た、もうもがいても喚いても駄目だと観念して、
彼らのなすがままに引き立てられて階下のボーイ部屋に押し込められた。
そこで暴兵らは、またもや悲鳴を挙げて拒む女中を取り押さえて、
腰巻までも奪おうとする。これを見た余は思わず眼がくらんだ。
凌辱でもして見ろ、その時には剣を奪って斬り死にしてくれんと
決心し見ていると幸いそのまま出て行ってしまった。
これより先、危害がいよいよ身辺に迫ったので、このままでは暴徒のために
掠奪されるばかりだと思ったので、余は密かにボーイを密使に立てて、
急を領事館に告げしめ適宜の処置を請うた。
宿から領事館まで二十丁の道程だが、ボーイは待てど暮らせど帰らぬ。
やっと十時過ぎに帰って来て、領事館も大掠奪を受けている。
兵隊が一杯でとてもゆけぬと告げた。
まさか領事館がやられるはずはない、遭難を恐れて途中から逃げ帰ってきたのかも
知れぬ、この上は命をかけても飯事館に逃げのびるはか道はないと考えて、
裏口から脱け出ようとしているところへ、またもや鬼のような兵士が十数人押し寄せて、
日本人は全部銃殺するから用意せよと破れ鐘のような声で宣告し、
壁際に引き据えて、まず小銃の狙いを女中の心臓部にすえた。
もうこれまでだ、暴徒は遂に引金を引いた。すると天いうか、
弾丸が入っていなかったため、空しくカチリと鳴っただけで、
命はようやく絶たれんとして一瞬に残し得た。
暴兵はいまいましげに舌打ちして気をいら立てながら弾丸を入れているところへ、
突如少佐服を着けた二人の将校が門の前を通り合わせ、この有様を見るや否や、
つかつかと入って来て兵士の腕をつかんで制止したので、余らは危機一髪を
免れたが、暴兵はいまいましげににらみつけて立ち去った。》
つづく
33〜35p
《 余は無抵抗のいかに悲惨なるかを体験し、生来二十八年、
この時ほど自分が弱いものだと思ったことはなかった。
しかしこうなれば死を決して暴徒のなすままに天運を待つほかなかった。
そのうちに余らは外套、服、ワイシャツ、着ているもの全部をはぎ奪われ、
ズボン下一つきりになったが、暴兵は刻々に数を増すばかりで、
奪ってゆくもののなくなった腹立たしさに、室内の小道具類を片端から破壊し始め、
『百円出せば命だけ助けてやる』 とか、
『張作霖びいきの日本人は皆殺しだ、もう五十人殺された』 などと喚きながら、
一人の兵は一間余も間近からピストルを向けて余を狙撃した。
幸いにして弾丸は余のびんをかすめ、とびらを貫いた。
一緒の者四人既に生きた心地はない。
どうでもなれと観念のほぞを固めているうち、
兵隊に続いて潮の如き無頼漢の群衆雪崩れ込んで来て口々に我々を冷笑しながら、
家の中の品物を片ッ端から持ちだしてゆく。
めぼしい品物はもちろんのこと、後では畳、床板、便器、鉄瓶のかかった火鉢、
たんつぼに至るまで持ち出して、
部屋の中はまるで馬小屋同様のあばら家同然となってしまった。
余らは丸裸になってこの暴挙を眼の辺に眺めながら、どうなる事かと胸を痛めていると、
やがてどかどかと数人の兵が飛び込んできて、『貴様らは支那の土地に勝手に
家を建てる権利はない、早く出てゆけ、下で銃殺してやるから早くゆけ』
と言い捨てて余らを引きずり出した。
いよいよ最後の時が来た、もうもがいても喚いても駄目だと観念して、
彼らのなすがままに引き立てられて階下のボーイ部屋に押し込められた。
そこで暴兵らは、またもや悲鳴を挙げて拒む女中を取り押さえて、
腰巻までも奪おうとする。これを見た余は思わず眼がくらんだ。
凌辱でもして見ろ、その時には剣を奪って斬り死にしてくれんと
決心し見ていると幸いそのまま出て行ってしまった。
これより先、危害がいよいよ身辺に迫ったので、このままでは暴徒のために
掠奪されるばかりだと思ったので、余は密かにボーイを密使に立てて、
急を領事館に告げしめ適宜の処置を請うた。
宿から領事館まで二十丁の道程だが、ボーイは待てど暮らせど帰らぬ。
やっと十時過ぎに帰って来て、領事館も大掠奪を受けている。
兵隊が一杯でとてもゆけぬと告げた。
まさか領事館がやられるはずはない、遭難を恐れて途中から逃げ帰ってきたのかも
知れぬ、この上は命をかけても飯事館に逃げのびるはか道はないと考えて、
裏口から脱け出ようとしているところへ、またもや鬼のような兵士が十数人押し寄せて、
日本人は全部銃殺するから用意せよと破れ鐘のような声で宣告し、
壁際に引き据えて、まず小銃の狙いを女中の心臓部にすえた。
もうこれまでだ、暴徒は遂に引金を引いた。すると天いうか、
弾丸が入っていなかったため、空しくカチリと鳴っただけで、
命はようやく絶たれんとして一瞬に残し得た。
暴兵はいまいましげに舌打ちして気をいら立てながら弾丸を入れているところへ、
突如少佐服を着けた二人の将校が門の前を通り合わせ、この有様を見るや否や、
つかつかと入って来て兵士の腕をつかんで制止したので、余らは危機一髪を
免れたが、暴兵はいまいましげににらみつけて立ち去った。》
つづく
これは メッセージ 1306 (kireigotowadame さん)への返信です.