紛議 (二宮尊徳夜話)
投稿者: sawayakanikoniko 投稿日時: 2005/05/13 16:20 投稿番号: [34129 / 95793]
∞∞∞∞∞∞219
某村の紛議を解かんために金を棄て開拓の件
∞∞∞∞∞∞
某という村の名主に横領があると、村中寄り集まり、口の達者なものに頼んで訴
訟をおこそうと騒ぎ立てた。翁はその村の主だった者23人を呼んで言われた。
翁 「横領はいくらだ。」
村人「米200俵余りでしょう。」
翁 「200俵の米は少なくはないといえるが、これを金に換算すれば80円、
村民90余戸に割ると1戸当り90銭足らずだ。ところが名主・組頭などは持高
が多い。ほか10石以上の所有者は30戸だろう。その他は3石・5石で無高の
者もいるだろう。この者にいたっては取る物はなく、たといあってもわずかの金
だ。それをこのように騒ぎ立てるのは大損ではないか。
この件は確証があるとはいっても地頭の用役に関係があると聞けば容易に勝てな
い。たとい勝てても経費は莫大となり集会の時間やその上めいめいの内々の損ま
でを計算すれば大損は眼前だ。なぜなら未だ出訴してないうちから数度の集会、
下調べなどのために費やした金は少なくない。
その上彼は旧来の名主だ。これをやめて後に名主にすべき人物は誰だ?わたしが
見渡すところこれといって指名できる者は見えない。よくよく思慮すべきところ
だ。だったらこれから横領のできないように厳に方法を設けてことごとく通い帳
で取立て、役場の帳簿法を改正してあげるから、その間できれば名主もそのまま
置くように。そのままに置けば、給料を半分に減らして半分を村に出させなさい。
横領米の償い方はわたしが別に工夫がある。字某の荒地は云々のところから水を
引けば、田となるだろう。この地に村の共有地2町歩ほどは良田となる。これを
開拓してあげる間、一同出訴をやめて労賃を取りなさい。しかも集会をする暇で
共同して耕作すれば、秋は7・80俵の米は受け合いだ。来秋は8・90俵、来
来年は100俵を得るだろう。3年間は一同で分け取り、4年目から開拓料を返
済しなさい。返済皆済の上は、村の永久安泰の土台田地として法を立てなさい」
と懇々と説諭された。
一同は了解したと報せた。
翁は自ら集会所へ臨んで、説諭に随うと言ったことを賞賛し、酒肴を与え、そし
て「上記の開拓は明朝夜明けから取りかかり、賃金はしかじかずつ払う、遅刻し
ないように」と言われた。一同拝み感謝し喜んで退散した。名主某も5カ年間無
給で精勤したいという旨を発表した。
翁は言われた。
「村にとっての大難をわずかな金で買えた。安いものだ。このような災難があれ
ばあなた方も早く買い取りなさい。村が修羅場に陥るところを一挙に安楽国に引
き止めた。名僧の功徳に勝るだろう。」と喜悦された。
翁が金を出して無利息金を貸与して、紛争を解除されたことは数え切れない。今
その一つを記す。
某という村の名主に横領があると、村中寄り集まり、口の達者なものに頼んで訴
訟をおこそうと騒ぎ立てた。翁はその村の主だった者23人を呼んで言われた。
翁 「横領はいくらだ。」
村人「米200俵余りでしょう。」
翁 「200俵の米は少なくはないといえるが、これを金に換算すれば80円、
村民90余戸に割ると1戸当り90銭足らずだ。ところが名主・組頭などは持高
が多い。ほか10石以上の所有者は30戸だろう。その他は3石・5石で無高の
者もいるだろう。この者にいたっては取る物はなく、たといあってもわずかの金
だ。それをこのように騒ぎ立てるのは大損ではないか。
この件は確証があるとはいっても地頭の用役に関係があると聞けば容易に勝てな
い。たとい勝てても経費は莫大となり集会の時間やその上めいめいの内々の損ま
でを計算すれば大損は眼前だ。なぜなら未だ出訴してないうちから数度の集会、
下調べなどのために費やした金は少なくない。
その上彼は旧来の名主だ。これをやめて後に名主にすべき人物は誰だ?わたしが
見渡すところこれといって指名できる者は見えない。よくよく思慮すべきところ
だ。だったらこれから横領のできないように厳に方法を設けてことごとく通い帳
で取立て、役場の帳簿法を改正してあげるから、その間できれば名主もそのまま
置くように。そのままに置けば、給料を半分に減らして半分を村に出させなさい。
横領米の償い方はわたしが別に工夫がある。字某の荒地は云々のところから水を
引けば、田となるだろう。この地に村の共有地2町歩ほどは良田となる。これを
開拓してあげる間、一同出訴をやめて労賃を取りなさい。しかも集会をする暇で
共同して耕作すれば、秋は7・80俵の米は受け合いだ。来秋は8・90俵、来
来年は100俵を得るだろう。3年間は一同で分け取り、4年目から開拓料を返
済しなさい。返済皆済の上は、村の永久安泰の土台田地として法を立てなさい」
と懇々と説諭された。
一同は了解したと報せた。
翁は自ら集会所へ臨んで、説諭に随うと言ったことを賞賛し、酒肴を与え、そし
て「上記の開拓は明朝夜明けから取りかかり、賃金はしかじかずつ払う、遅刻し
ないように」と言われた。一同拝み感謝し喜んで退散した。名主某も5カ年間無
給で精勤したいという旨を発表した。
翁は言われた。
「村にとっての大難をわずかな金で買えた。安いものだ。このような災難があれ
ばあなた方も早く買い取りなさい。村が修羅場に陥るところを一挙に安楽国に引
き止めた。名僧の功徳に勝るだろう。」と喜悦された。
翁が金を出して無利息金を貸与して、紛争を解除されたことは数え切れない。今
その一つを記す。
これは メッセージ 1 (nono7370 さん)への返信です.
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