国際法<続き②>
投稿者: silverlining430 投稿日時: 2004/05/31 00:14 投稿番号: [41658 / 118550]
アフガンに対する武力行使は、国連安保理決議1368により「自衛権の行使」として認定され、正当化されましたよね。
ただ、アフガンに対する武力行使を「自衛権の行使」として説明するには、やはりかなりのムリがあったんです。
自衛権の発動要件として、①緊急性 ②必要性 ③均衡性の3つが挙げられますが、この3つをアフガンに対する武力行使は満たしているのかどうかというと、うーんと頭を抱えてしまうわけです。
しかも、そもそも上の3つの要件は、1839年に当時英国領だったカナダでの反乱に対し、反徒が物資・人員の補給に用いていた米国籍のカロライン号を英国軍が攻撃した際に、英国はこの攻撃を自衛権で正当化した際に、米国のウェブスター国務長官が、①危険が差し迫って圧倒的であり ②他に手段を選ぶ余裕もないほど切迫しており ③選択された措置が自衛のための限度内のものである――という条件が慣習国際法化したものなんです(いわゆる「ウェブスター・フォーミュラ」)。つまり米国発の要件というわけです。
アフガンでの武力行使では、特に②の要件を満たしているかどうかが問題になりました。そりゃ、もうWTCなどの標的が攻撃され、破壊された「後」だったので、次の攻撃を想定したとしても、それがどれだけ切迫していたどうかは分からないし、武力行使という手段でなければいけなかったかどうかも明確には判断できなかったから…。
で、自衛権で正当化するのは既存の法理論では難しいぞと思ったフランスが、この時はご親切に「テロを平和の脅威と認定し、憲章7章の軍事的措置の発動とする新安保理決議を採択したらどうか。我々も賛成するよ」と提案したのです。
しかし、米国はこの提案に対し、"Thank you. But no thank you."と答え、丁重に断ったと言います。後でこの言葉の真意を確認したところによると、米国は、「国家からの侵略ばかりでなく、テロの攻撃に対しても、全ての国が自衛権を持っているのだということを証明したかったのだ」と聞きました。従来の「自衛権」にテロの脅威に対抗するという新たな要素を加えることで、米国が自ら生み出し、慣習法として確立させたウェブスター・フォーミュラをあえて不問に付したのでした。
僕は、概念としては、やはり「自衛権」というよりも、来るべき脅威を食い止めることを目的とした「予防攻撃」であり、やはり既存の国際法上は正当化できないものであると思っていますが、いずれにせよ、この米国の態度は、テロ対策としての予防行動(武力行使だけではない)をいかに効果的取れるようにしたらよいのかも含め、国連安保理改革などを話し合う、アナン事務総長が設置し、緒方貞子さんなども委員を務める高級諮問委員会の議論を刺激していると言えます。現存の国際法システムを見直す一つの契機となったことは間違いないでしょう。
(続く)
ただ、アフガンに対する武力行使を「自衛権の行使」として説明するには、やはりかなりのムリがあったんです。
自衛権の発動要件として、①緊急性 ②必要性 ③均衡性の3つが挙げられますが、この3つをアフガンに対する武力行使は満たしているのかどうかというと、うーんと頭を抱えてしまうわけです。
しかも、そもそも上の3つの要件は、1839年に当時英国領だったカナダでの反乱に対し、反徒が物資・人員の補給に用いていた米国籍のカロライン号を英国軍が攻撃した際に、英国はこの攻撃を自衛権で正当化した際に、米国のウェブスター国務長官が、①危険が差し迫って圧倒的であり ②他に手段を選ぶ余裕もないほど切迫しており ③選択された措置が自衛のための限度内のものである――という条件が慣習国際法化したものなんです(いわゆる「ウェブスター・フォーミュラ」)。つまり米国発の要件というわけです。
アフガンでの武力行使では、特に②の要件を満たしているかどうかが問題になりました。そりゃ、もうWTCなどの標的が攻撃され、破壊された「後」だったので、次の攻撃を想定したとしても、それがどれだけ切迫していたどうかは分からないし、武力行使という手段でなければいけなかったかどうかも明確には判断できなかったから…。
で、自衛権で正当化するのは既存の法理論では難しいぞと思ったフランスが、この時はご親切に「テロを平和の脅威と認定し、憲章7章の軍事的措置の発動とする新安保理決議を採択したらどうか。我々も賛成するよ」と提案したのです。
しかし、米国はこの提案に対し、"Thank you. But no thank you."と答え、丁重に断ったと言います。後でこの言葉の真意を確認したところによると、米国は、「国家からの侵略ばかりでなく、テロの攻撃に対しても、全ての国が自衛権を持っているのだということを証明したかったのだ」と聞きました。従来の「自衛権」にテロの脅威に対抗するという新たな要素を加えることで、米国が自ら生み出し、慣習法として確立させたウェブスター・フォーミュラをあえて不問に付したのでした。
僕は、概念としては、やはり「自衛権」というよりも、来るべき脅威を食い止めることを目的とした「予防攻撃」であり、やはり既存の国際法上は正当化できないものであると思っていますが、いずれにせよ、この米国の態度は、テロ対策としての予防行動(武力行使だけではない)をいかに効果的取れるようにしたらよいのかも含め、国連安保理改革などを話し合う、アナン事務総長が設置し、緒方貞子さんなども委員を務める高級諮問委員会の議論を刺激していると言えます。現存の国際法システムを見直す一つの契機となったことは間違いないでしょう。
(続く)
これは メッセージ 41653 (silverlining430 さん)への返信です.
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