私の好きな一節です。
投稿者: from_east_coast_25 投稿日時: 2004/03/18 17:09 投稿番号: [34309 / 118550]
これによっていかなる意見を押し付けようとも思いませんが...
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私としては、あの明治百年の行事を今また思い出してみると、関連して思わぬ訳にいかない。 あの時私は都合で少し遅刻をしてしまい、国会議員の席としては後ろ側の野党議員たち、主に社会党の議員たちの席に座っていた。式典が進んでいって、最後に体育大学の学生たちによる立体的なマスゲームが行われ、その後、佐藤総理の音頭で日本国万歳が三唱され式は終わった。
やがて司会のNHKのアナウンサーが、 「天皇、皇后両陛下がご退席になります。」と報せ、参加した全員がまた立ち上がって両陛下をお見送りした。そしてあのことが起こったのだった。
それが起こった瞬間に、私だけではあるまい、出席していたほとんど全員がこの式典に実は何が一つだけ足りなかったかを知らされていたとおもう。
壇上から下手に降りられた両陛下が私たちの前の舞台下の床を横切って前へ進まれ、丁度舞台の真ん中にかかられた時、二階の正面から高く澄んだ声が、
「テンノー、ヘイカッ」 叫んでかかった。
その瞬間陛下はぴたと足を止め、心もちかがめられていた背をすくっと伸ばされ、はきっり声に向き直って立ち直されたのだった。
そしてその陛下に向かって声は見事な間をとって、「バンザアーイッ!」叫んだ。
次の瞬間会場にいた者たちすべてが、実に自然に、晴れ晴れとその声に合わせて万歳を三唱していた。私の周りにいた社会党の議員たちも全く同じだった。
そして誰よりも 最前列にいた佐藤総理がなんとも嬉しそうな、満足しきった顔で両手を掲げ万歳を絶叫していた。あれはつくづく見事な「天皇陛下万歳」だったとおもう。あの席にいながらなお、あれに唱和出来なかった日本人がいたかも知れぬなどとはとても思えない。あれは単なる天皇への言寿(ことほぎ)ではなしに、私たちを突然見舞った熱い回顧であり確認だった。それを唱えながら私たちは忘れかけていたものを突然思い出し、静かに、密かに熱狂していた。あの瞬間ただひたすら、
゛ああ、かつて私たちはこうだった。なんだろうと、こういう連帯があったのだった゛と誰しもがしみじみと感じなおしていた。 あれはなんといおう、国家なり民族というものの実存への、狂おしいほど激しい再確認だったとおもう。
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石原慎太郎著「国家なる幻影」より
これは メッセージ 34286 (syoumenkyousi さん)への返信です.
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