対イラク武力行使

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汚れた弾丸−(3)

投稿者: need2003jp 投稿日時: 2003/11/17 15:10 投稿番号: [27686 / 118550]
  森住と伊藤さんは、イラクの首都バグダッドにある、マンスール小児病院白血病専門病棟を訪れた。
  「ここに、ガンや白血病の子どもたちが入院しているんですね」
  「ええそうです」
  一体、どのような状況になっているのだろう。不安を胸に、病棟に入ろうとする森住を前に、一組の母子連れの姿が目に入った。
  「どうやら、あの子は退院のようですね」
  森住の言葉に、伊藤さんは少女の方を指差した。
  「彼女は、サファアというのよ」
  森住は、カメラを構えた。レンズの中の少女は、伊藤さんに気づいたのか、「マサコ!!」と、元気良く声をかけた。
  「ハイ、サファア」
  笑顔で声をかける伊藤さんに、サファアは近づいていく。その時、風が吹いて、彼女の被っていた布が飛んだ。被り物の脱げた彼女の頭に、森住は言葉を呑み込んだ。
  髪が、なかったのだ。照れ笑いを浮かべるサファアを横目に、伊藤さんは悲しそうな表情を見せた。
  「彼女は、抗がん剤の副作用で、髪が抜け落ちてしまったの」
  サファアの母も、言った。
  「サファアは、治ったから退院できるわけではないんです。本当は治療の薬がなくなってしまったので、仕方なく退院するの。でも、この子は退院できるのがうれしくて仕方ないようね・・・」
  「一枚、そのかわいい顔を、写真に撮らせてもらっていいかな」
  「ええ、いいわよ」
  私の言葉に、彼女は元気良く頷いた。私は、彼女の笑顔を、シャッターに収めた。
  病院を去るサファアとその母を見送る森住の心は、ざわついていた。
  「しかし、薬がないから退院とは・・・伊藤さんから話は聞いていたが、いったい病院の中ではどんな状況が待っているんだ?」
  「どうぞ中へ」
  伊藤さんは、森住を病院に案内した。その病院内は、森住の想像を絶するものだった。サファアのように髪が抜け落ちた子どもから、奇形児など、事態の深刻さがひしひしと伝わるものだった。
  「これは・・・想像以上にひどい状況ですね」
  森住の言葉に、現地の医者が溜め息をつくように言った。
  「湾岸戦争後です。それ以前には、ほとんど見られなかった白血病やガンの子どもが、病院に押し寄せてくるようになったのは。白血病やガンは、戦前に比べ10倍にも激増し、更に新生児の先天的障害も増えつづけ、障害児の出生率は26.9人・・・4人に1人の比率になっています。この病院も、急増する白血病に対応するため、93年に白血病専門病棟を作ったぐらいですから」
  森住は、ふとサファアのことを思い出し、医師に尋ねた。
  「そういえば、サファアという女の子が、薬がないので退院するといっていましたが・・・」
  「見てください」
  医師は、そういって引き出しを開けると、抗生物質と思われるビンが2つあるだけだった。
  「最も原始的な抗生物質しかありません。輸入に頼っていた薬や医療機器が、経済制裁のために自由に手にいれることができなくなったのです」(続く)


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