汚れた弾丸−(4)
投稿者: need2003jp 投稿日時: 2003/11/17 15:50 投稿番号: [27687 / 118550]
国連による経済制裁―90年夏に、国連で決議されたイラクへの経済制裁は、湾岸戦争後も引き続き継続される。この経済制裁は、96年オイルフォワードプログラムによって緩和されるが、状況は以前と変わらなかった。
このオイルフォワードプログラムというのは、経済制裁緩和の目的で行われた制度で、イラクで採れた石油を売って得たお金を、国連名が管理して必要と認めた食料や医薬品などの人道支援物資を、イラクが輸入できるという制度である。
しかし、経済制裁は、激しいインフレを引き起こして、失業者が街に溢れ、イラクの経済状況を悪化させた。経済制裁のために亡くなった人は、100万人とも言われ、そのダメージは戦争よりも大きい。
さて、森住卓は、バクダッドにある、マンスール小児病院白血病専門病棟にいた。
「しかし、病気を治すための薬までがなぜ・・・」
病院の現状に、森住は疑問を抱いていた。
「化学兵器の材料になるからという理由だそうですよ。まったくどうかしてる。仮に薬が入ってきたとしても、必要な薬が一度に入ってくることがありません。4つの薬が必要だとしたら、今年1つ入って、それがなくなった頃の翌年に別の薬が入ってくる。そういう筋の通らない対応が、患者の症状を悪化させている。乳がんの薬や白血病の治療薬などは、全く入ってこないんです」
医師は、目に涙をためながら言った。
「我々はただ・・・病気を治してあげたいだけなのに、何もしてやることができず、毎日子どもたちが死んでいく、この無念さは分かりますか。早く経済制裁を解除して欲しい・・・」
森住は、ただだ唖然とするばかりだった。
「何てことだ・・・事態の深刻は、はるかに想像を越えている・・・」
その時、どこからともなく、子どもの大きな叫び声が聞こえた。
「何でしょう」
「あちらの病室からね」
伊藤さんと森住は、お互い目を見合わせつつ、声の方向にある病室を訪れた。
そこには、お腹が異常に膨らんだ子どもが、泣いていたのだ。その腹には、注射針が2本打ち込まれ、腹の中の水を取るのであろう綿が、置かれていた。
「これは・・・」
森住は、ショックで目を見開くだけだった。そして、傍らにいた医師に、尋ねた。
「一体、何の治療をしているのですか!?」
「あの子は、ファーデルというのですが、骨髄ガンなのです。既に内臓に転移して、手の施しようがありませんでした。あれは、少しでも苦痛を和らげる苦肉の策で、お腹にたまった腹水を、注射器でぬいてあげることしかしてあげられないのです」
注射針を針に打ち込まれる激痛からか、ファーデルは、「痛い・・・痛いよ、パパー!!」と泣き叫ぶ。
「こんな小さい子が、毎日痛みに耐えて暮らしていかなきゃならないなんて・・・・取材とはいえ、写真もとるのも辛い」
そう思って、森住は伊藤さんとともに、病室を出ると、ひとりの中年男が、うずくまっていた。どうやら、ファーデルの父親らしい。
その男は、涙目で森住と目をあわすと、すがるように訴えてきた。
「あんた、日本人か・・・」
「え!?」
森住は、不意を突かれた感になったが、ファーデルの父は、なおもすがった。
「お願いだ・・・・あの子を日本につれてやってくれ・・・・あの子の命を救ってやってくれ!!」
その切迫に、森住は言葉を失っていた。
「お願いだ・・・娘が苦しんでいるのに、俺は何もしてやれない・・・俺は父親なのに失業しちまって、金がないから・・・だから・・・」
そういうと、ファーデルの父は、森住の両腕を掴んで号泣し始めた。森住は、ただじっと彼の手を握り締めてやることしかできなかった・・・
このファーデルという娘は、間もなく亡くなった。(続く)
*続きは、木曜日にまとめて書きます。悪しからず。
このオイルフォワードプログラムというのは、経済制裁緩和の目的で行われた制度で、イラクで採れた石油を売って得たお金を、国連名が管理して必要と認めた食料や医薬品などの人道支援物資を、イラクが輸入できるという制度である。
しかし、経済制裁は、激しいインフレを引き起こして、失業者が街に溢れ、イラクの経済状況を悪化させた。経済制裁のために亡くなった人は、100万人とも言われ、そのダメージは戦争よりも大きい。
さて、森住卓は、バクダッドにある、マンスール小児病院白血病専門病棟にいた。
「しかし、病気を治すための薬までがなぜ・・・」
病院の現状に、森住は疑問を抱いていた。
「化学兵器の材料になるからという理由だそうですよ。まったくどうかしてる。仮に薬が入ってきたとしても、必要な薬が一度に入ってくることがありません。4つの薬が必要だとしたら、今年1つ入って、それがなくなった頃の翌年に別の薬が入ってくる。そういう筋の通らない対応が、患者の症状を悪化させている。乳がんの薬や白血病の治療薬などは、全く入ってこないんです」
医師は、目に涙をためながら言った。
「我々はただ・・・病気を治してあげたいだけなのに、何もしてやることができず、毎日子どもたちが死んでいく、この無念さは分かりますか。早く経済制裁を解除して欲しい・・・」
森住は、ただだ唖然とするばかりだった。
「何てことだ・・・事態の深刻は、はるかに想像を越えている・・・」
その時、どこからともなく、子どもの大きな叫び声が聞こえた。
「何でしょう」
「あちらの病室からね」
伊藤さんと森住は、お互い目を見合わせつつ、声の方向にある病室を訪れた。
そこには、お腹が異常に膨らんだ子どもが、泣いていたのだ。その腹には、注射針が2本打ち込まれ、腹の中の水を取るのであろう綿が、置かれていた。
「これは・・・」
森住は、ショックで目を見開くだけだった。そして、傍らにいた医師に、尋ねた。
「一体、何の治療をしているのですか!?」
「あの子は、ファーデルというのですが、骨髄ガンなのです。既に内臓に転移して、手の施しようがありませんでした。あれは、少しでも苦痛を和らげる苦肉の策で、お腹にたまった腹水を、注射器でぬいてあげることしかしてあげられないのです」
注射針を針に打ち込まれる激痛からか、ファーデルは、「痛い・・・痛いよ、パパー!!」と泣き叫ぶ。
「こんな小さい子が、毎日痛みに耐えて暮らしていかなきゃならないなんて・・・・取材とはいえ、写真もとるのも辛い」
そう思って、森住は伊藤さんとともに、病室を出ると、ひとりの中年男が、うずくまっていた。どうやら、ファーデルの父親らしい。
その男は、涙目で森住と目をあわすと、すがるように訴えてきた。
「あんた、日本人か・・・」
「え!?」
森住は、不意を突かれた感になったが、ファーデルの父は、なおもすがった。
「お願いだ・・・・あの子を日本につれてやってくれ・・・・あの子の命を救ってやってくれ!!」
その切迫に、森住は言葉を失っていた。
「お願いだ・・・娘が苦しんでいるのに、俺は何もしてやれない・・・俺は父親なのに失業しちまって、金がないから・・・だから・・・」
そういうと、ファーデルの父は、森住の両腕を掴んで号泣し始めた。森住は、ただじっと彼の手を握り締めてやることしかできなかった・・・
このファーデルという娘は、間もなく亡くなった。(続く)
*続きは、木曜日にまとめて書きます。悪しからず。
これは メッセージ 27686 (need2003jp さん)への返信です.
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