コリン・パウエルの苦悩(開戦前−3)
投稿者: need2003jp 投稿日時: 2003/09/17 15:19 投稿番号: [27151 / 118550]
「長官、大統領とのお話は如何に?」
ブッシュ大統領との会談を終え、国務省に戻ったパウエルを、首のないでっぷらとした男が出迎えた。パウエルの配下である、アーミテージ国務副長官だった。
「駄目だった」
パウエルは、太い息を吐いた。アーミテージは、表情をこわばらせたまま、しばしうつむいていたが、パウエルに対して、単刀直入に訊ねた。
「で、Xデーは、いつなんですか?」
「たぶん、3月20日前後ぐらいだろう。4月に入ると、イラクでは気温が40度を超える暑い日々が続く。重装備をしている兵士にとっては、この暑さは、酷なものとなるだろう。加えて、砂漠の砂嵐によって、視界が遮られたり、ハイテク兵器が使い物にならなくなる可能性が高い。ペンタゴンの連中は、4月上旬に決着をつける算段だろうから、3月20日前後が、最も妥当なラインだろうな。」
なるほど、アーミテージは、納得するように頷いた。
「それと、もう1つ」
パウエルは、付け加えるように言った。
「CIAの連中が、フセインの居場所を特定しつつあるという情報も流れている。」
「それは、私も聞きましたが・・・」
「世論は、大規模攻撃による開戦を予想しているが、ひょっとしたら、ピンポイント攻撃による開戦、というシナリオもあり得る。」
「フセインを狙い撃ちにするのですね。」
アーミテージは、大きなため息をついた。
「しかし、今回の戦争は、うまくいくのだろうか?フセイン政権からのイラク国民の開放と大量破壊兵器という材料はありますが、未だに国連の査察団から、核心のつくものが出ていません。国連も、我々のイラク攻撃を承認していませんし、フランスやドイツの抵抗も、かなり厳しい。」
「大統領は、単独でもやる腹だろう。」
「国連の承認なしで、ですか?」
アーミテージの問いに、パウエルは黙って頷いた。アーミテージは、またしても、大きなため息をつき、呟くように言った。
「戦争とは、この世で一番美しい仮面を被った、この世で一番醜悪なもの。ベトナムに行った我々は、それを思い知らされたのに・・・」
アーミテージの言うとおりだった。戦争というものは、男女の愛とか、夢とか希望、理想も一切拒絶した、冷徹無残な世界だった。それは、現場指揮官として、戦場の真っ只中にいたパウエルには、痛いほどわかっていた。
「何できなかった。」
パウエルは、目を閉じた。全身から、無力感が、這い上がって来る。同時に、湾岸戦争の悲惨な映像が、彼の脳裏をよぎった。兵士たちや罪のない民間人の死骸、そして劣化ウラン弾や、戦争によって心を病んだ者たちの苦悶の声が、パウエルの心を締め付けていた。湾岸戦争の際、現場指揮官だったパウエルは、マスコミの取材を一切シャットアウトにした。それは、戦争の悲惨な映像を、国民が見たら、順調に進んでいった作戦もご破算になると確信していたからだ。
確かに、フセインは叩くべき相手であるという気持ちに変わりはない。だが、今回の戦争は、時期尚早といった感は否めない。このまま、単独で戦争を始めれば、石油利権の問題などで、アメリカは国際社会から批判を受けるだろう。
2003年、3月20日−イラク戦争は始まった。
ブッシュ大統領との会談を終え、国務省に戻ったパウエルを、首のないでっぷらとした男が出迎えた。パウエルの配下である、アーミテージ国務副長官だった。
「駄目だった」
パウエルは、太い息を吐いた。アーミテージは、表情をこわばらせたまま、しばしうつむいていたが、パウエルに対して、単刀直入に訊ねた。
「で、Xデーは、いつなんですか?」
「たぶん、3月20日前後ぐらいだろう。4月に入ると、イラクでは気温が40度を超える暑い日々が続く。重装備をしている兵士にとっては、この暑さは、酷なものとなるだろう。加えて、砂漠の砂嵐によって、視界が遮られたり、ハイテク兵器が使い物にならなくなる可能性が高い。ペンタゴンの連中は、4月上旬に決着をつける算段だろうから、3月20日前後が、最も妥当なラインだろうな。」
なるほど、アーミテージは、納得するように頷いた。
「それと、もう1つ」
パウエルは、付け加えるように言った。
「CIAの連中が、フセインの居場所を特定しつつあるという情報も流れている。」
「それは、私も聞きましたが・・・」
「世論は、大規模攻撃による開戦を予想しているが、ひょっとしたら、ピンポイント攻撃による開戦、というシナリオもあり得る。」
「フセインを狙い撃ちにするのですね。」
アーミテージは、大きなため息をついた。
「しかし、今回の戦争は、うまくいくのだろうか?フセイン政権からのイラク国民の開放と大量破壊兵器という材料はありますが、未だに国連の査察団から、核心のつくものが出ていません。国連も、我々のイラク攻撃を承認していませんし、フランスやドイツの抵抗も、かなり厳しい。」
「大統領は、単独でもやる腹だろう。」
「国連の承認なしで、ですか?」
アーミテージの問いに、パウエルは黙って頷いた。アーミテージは、またしても、大きなため息をつき、呟くように言った。
「戦争とは、この世で一番美しい仮面を被った、この世で一番醜悪なもの。ベトナムに行った我々は、それを思い知らされたのに・・・」
アーミテージの言うとおりだった。戦争というものは、男女の愛とか、夢とか希望、理想も一切拒絶した、冷徹無残な世界だった。それは、現場指揮官として、戦場の真っ只中にいたパウエルには、痛いほどわかっていた。
「何できなかった。」
パウエルは、目を閉じた。全身から、無力感が、這い上がって来る。同時に、湾岸戦争の悲惨な映像が、彼の脳裏をよぎった。兵士たちや罪のない民間人の死骸、そして劣化ウラン弾や、戦争によって心を病んだ者たちの苦悶の声が、パウエルの心を締め付けていた。湾岸戦争の際、現場指揮官だったパウエルは、マスコミの取材を一切シャットアウトにした。それは、戦争の悲惨な映像を、国民が見たら、順調に進んでいった作戦もご破算になると確信していたからだ。
確かに、フセインは叩くべき相手であるという気持ちに変わりはない。だが、今回の戦争は、時期尚早といった感は否めない。このまま、単独で戦争を始めれば、石油利権の問題などで、アメリカは国際社会から批判を受けるだろう。
2003年、3月20日−イラク戦争は始まった。
これは メッセージ 27150 (need2003jp さん)への返信です.
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