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「ハジ・ムラート」トルストイ①

投稿者: imonoyamashotengai 投稿日時: 2004/11/26 18:34 投稿番号: [3027 / 5091]
「自己防衛の口実の下に(攻撃はいつも強国からひき起こされるにもかかわらず
   )、あるいは野蛮な民族は文明化するという口実の下に(その野蛮な民族は
  文明化する者たちよりも比較にならないほどよい、平和な暮らしをしていると
  いうのに)、あるいは他の何らかの口実の下に、巨大軍事力の国家の召使ども
  は弱い民族にたいしてありとあらゆる悪事をおかす、彼らにはこうするより他
  に手がないとうそぶいて」

  19世紀のこのトルストイの言葉は、残念ながら、21世紀現代にも当てはまって
しまうと私には思えます。
  文明の衝突、未開と文明、中東民主化構想、遅れたイスラムを民主化してやる
んだという思い上がり。

  1851年、北コーカサスの山岳民族の英雄ハジ・ムラートがロシア軍に投降した
時、トルストイもまたその北コーカサスに居ました。

  トルストイは、最晩年、「ハジ・ムラート」を書きます。推敲に推敲を重ね、
生前には発表しませんでした。
  何度も何度も改稿していることから、その愛着ぶりが推察できます。

  19世紀のコーカサス戦争。
宗教指導者イマーム=シャミーリの下、チェチェンとダゲスタン一帯に
イスラム教スーフィズムに基づく神政国家を数十年間に亘って樹立していました。
シャミーリと並ぶ山岳民族の英雄ハジ・ムラートを描いた作品です。

  冒頭の踏まれても踏まれても立ち上がってくる韃靼草の描写は、主人公ハジ・
ムラートを暗示するとともに、山岳民族を暗示しているのだと思います。
無骨で刺々しい韃靼草。
「まるで体の一部を切り離され、腸を露出し、片手をもぎ取られ、片目を抉り
  出されたような具合であったが、それでもやはり毅然と立ったまま、周囲の
  同胞をことごとく亡ぼしつくした人間に、降伏しようとしないのである」
「人間はすべてを征服して、幾百万の草を滅ぼし尽くしたが、この草だけは
  まだ屈服しようとしないのだ」

  レールモントフ、プーシキン、トルストイはいずれも「コーカサスの虜」と
いう作品を書いています。
  ロシア文学揺籃の地コーカサス。

  他のロシアの文学者達は、勇猛だが未開で野蛮と、コーカサスを表面的・外面
的にロマン主義の一素材としてしか扱いませんでした。
  文学的ロマンチシズムは、未開を文明化してやるんだというロシア帝国主義・
植民地主義イデオロギーの片棒を担いでいるように私には思えます。
  ロシアによる侵略を擁護するロマン主義とは、トルストイは明らかに一線を
画しています。
  トルストイに於けるその可能根拠は、人道主義・ヒューマニズムを拠点にして
いたからだと思います。

  登場人物の内面での揺れ動きを克明に描いているのはさすがです。
ハジ・ムラート、シャミーリ、ロシア軍の将軍、夫人、皇帝、、、
主要人物の内面世界の振幅を流動的に描いています。
ハジ・ムラートとて、ロシア軍の後ろ盾を得て、シャミーリを撃破し、ロシアで
軍功を立て、故郷アヴァールの封建領主になることを打算していました。
各自の打算と打算のぶつかり合いをきちんと描いています。
まさに「万人の万人に対する闘争」そのままです。

  文学作品という限定性に於いて描かれている訳ですから、各民族の階級構成、
各階級の利害の対立構造、その過程的推移等々の分析が為されていないのは当然
です。
  小説を超えて、しかし、その背景に迫る為には、現実社会の分析もまた必須だ
と思います。
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