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ドイツのラーべ日記について(4)

投稿者: natsumesouseki_hk 投稿日時: 2004/11/22 00:38 投稿番号: [15876 / 66577]
一月七日
『わが家の収容所の近くに(中略)住んでいた女性がいる。弟がー緒だが、こちらは両親と三人の子供をなくした。全員日本兵に射殺されてしまったのだ。せめて父親だけでも埋葬したいと、なけなしの金で棺桶を買ったところ、これを聞きつけた日本兵たちが蓋をこじ開け、亡骸を放り出したという。中国人なんかその辺に転がしておけばいいんだ、というのが、かれらの言い分だった』

延々と続く殺人と強姦、酸鼻をきわめる事件の数々。本書に収録されたドイツ大使館南京分室事務長シャルフェンベルクの記録では、南東大虐殺を生んだ背景をこう推測している。

『チンギス・ハーンを思い出してしまう。要するに「根絶やしにしろ」ということだ。ある参謀部の中佐から聞いたのだが、上海から南京へ向かった補給部隊は本隊に追いつかなかったそうだ。それで、日本兵はべルゼイガー(北欧神話に出てくる熊の皮をまとった大カで狂暴な戦士)のように手当たり次第に襲ったのか。「戦い抜けば、南京で美しい娘が手に入る」とでもいわれたに違いない』

二カ月半にわたる上海攻防戦で生死の淵をさ迷い、疲弊しきった兵士たちは、そのまま四百キロ道程を満足な食料の補給もないまま、南京へ向かっている。故郷へ帰る期待を裏切られ、自暴自棄になったとしても不思議ではない。しかし、南京の虐殺は一時の暴発的行為ではない。実に二カ月にもわたって延々と繰り返されたのである。シャルフェンベルクも結局、こう結論づけている。

『部隊が統制を失ったからだ、ということはやさしい。だが、私はそうは思わない。アジア人の戦争のやり方は、我々西洋人とは根本的に違っているからだ。もし、日本と中国の立場が逆だったとしても、おそらく大した違いはなかったろう』

一月十七月
『昨日の午後、ローゼンといっしょにかなり長い間市内を回った。すっかり気が滅入ってしまった。日本軍はなんというひどい破壊のしかたをしたのだろう。 あまりのことに言葉もない。近いうちにこの街が息を吹き返す見込みはあるまい。かつての目抜き通り、イルミネーションなら上海の南京路にひげをとらないと、南京っ子の自慢の種だった太平路は、あとかたもなく壊され、焼き払われてしまった』

「なぜこんなに野蛮なのか」

強姦、殺人の恐怖に替え、家を焼き払われた中国人難民に、追い討ちをかけるべく真冬の寒波が襲いかかる。

一月二十日
『吹雪だ! 難民の状態はみるも哀れのー言につきる。いかに情の薄い人でも、これを見たら同情せずにはいられまい。わが家の収容所はいまや巨大なぬかるみだ。(中略)難民は藁屋根の軒下で火を焚いているが、見て見ぬふりをすることにしている。この吹雪だ、火なんか焚いてもどうせすぐにまた消えてしまう。そうであれば、すこしぐらい危険でも暖まらせてやりたい』

一月二十ニ日
『マギー(牧師)がまたしても悪い知らせをもってきた。日本兵が食用の家畜を追いかけ回し、手当たりしだいに運んでいったというのだ。ちかごろは、中国人の若者を使って豚をつかまえさせている。(中略)一匹もつかまえることができなかった若者は、銃剣で突き殺された。なかのー人は内臓がはみ出して垂れ下がっていたという。これはみな目撃した人の話だ。こんなことばかり聞かされていると、気分が悪くなってくる。そうだ、やつらは犯罪者のよせ集めと思えばいいんだ。ふつうの人間にこんなことができるはずがない!』

延々と続く殺戮と強姦。ラーべのやり場のない怒りは、無抵抗のまま、暴力の餌食になっていく中国人たちへの苛立ちとなって現れる。
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