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Re: 「総統選」以後

投稿者: osoinen 投稿日時: 2008/03/26 11:37 投稿番号: [14288 / 16409]
【3月26日   産経新聞「正論」】

シリーズ「総統選」以後−「台湾人民の勝利」の意味は

                            元駐タイ大使   岡崎 久彦

  民主政治で一つの政党が永く政権を持てば、スキャンダルも発生して民心は倦(う)
む。しかし、台湾の総統選挙の結果はそれが予想させる以上の国民党の大勝であった。

  しかし、そのことは、かえって−負け惜しみでも何でもなく−台湾の将来について一
種の楽観的な見通しを持たせるものかもしれない、と思うに至っている。

  つまり、台湾の有権者は国民党の勝利が中台統一の可能性に結びつくとは全く考えて
いなかったということである。そうでなければチベット事件の最中に統一の可能性のあ
る選択をするはずがない。

  むしろ、当選した馬英九候補は初めから統一を支持しないと言っていたし、オリンピ
ック・ボイコットさえ示唆した。また選挙戦を通じて、国民、民進両党候補はそれぞれ
がいかに台湾人意識を持つかを競い合ったと言う。

  従来私は台湾の自由と民主主義の将来について危惧(きぐ)を持っていた。民主主義
は、与党と野党が民主制度の維持について、共通のヴィジョンを持っていなければ成立
しない。

  ナチスのような独断的な国家観を持つ政党を民主選挙で選ぶということは、民主的方
法で民主主義の終わりを選ぶということである。

  台湾の場合も、一国二制度を受容するような政権を選ぶということは自由と民主主義
の終わりを意味する。

  香港では10年経っても普通選挙が行われていないが、実は、そんなことは末梢(まっ
しょう)的である。問題は香港の自由があと40年しか残っていないということだ。50年
を100年にしても同じことである。自らの子孫の自由を放棄すると約束することである。

■国民党でも安心?

  私はそれを憂慮した。中国の胡錦濤が提案し馬英九候補がこれに応じた和平協定交渉
による平和的方法による場合でも、あるいは軍事的脅迫により屈服を迫る場合でも、総
統が国民党である場合は、一国二制度に近いものを受け容(い)れる可能性が高いと考
えたからである。

  そして、その可能性がゼロになるまでは民進党が政権を持つ方が安全と考えたのであ
る。そうなれば民主的な政権の交代が行われても台湾の将来に心配がないからである。

  今度の選挙の結果は、ひょっとすると、あるいは台湾はもうそういう段階に達してい
るのかもしれないという希望を持たせてくれた。

  もちろんまだ手放しの楽観は許されない。国民党が立法院の4分の3と総統の両方を
持っているという状況は二度と訪れないかもしれない。中国がそのチャンスを生かそう
とするのは自然であろう。

  私は、今度の選挙の結果から中国が誤ったシグナルを受け取らないことを希望する。
馬英九候補が大勝後「これは台湾人民の勝利」だと言ったことの背後にある台湾の民意
を中国は理解すべきである。

===   つづく   ===
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