日本の核武装(その3)
投稿者: wake_turbulence1180 投稿日時: 2006/10/20 09:29 投稿番号: [13434 / 43252]
●日本の核武装には反対である。
小生の意見は拙稿<8189>にて既に述べたので繰り返さないが、「防衛庁防衛研究所」 小川伸一氏の” 再燃している日本の核武装をめぐる議論について”を転載して諸氏の参考に供したい。なお、当該記事は長文の為<3回>に分けて紹介する。
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このように、唯一非脆弱な戦略核戦力として日本が期待できるのは、SSBN /SLBM 戦力であるが、その報復能力が「対都市報復能力」のみで終わる場合、抑止力には不安が残る。中露の都市に対して核報復の威嚇をかけても、両国が人口の集中している日本の都市群に対し再報復の威嚇をかけてきた場合、心理的にこれに耐えることができるか疑問が残るからである。説得力のある抑止力を備えるためには、対都市報復能力に加え、報復攻撃で相手の抗堪化された戦略核戦力を攻撃し、破壊できる「硬化目標即時破壊能力」をSLBM に付与しなければならない。この能力を確保しておけば、核エスカレーションの脅しに対する信憑性が高まり、それだけ抑止力も強化されるからである。
ところが、SLBM に硬化目標即時破壊能力を付与することは容易ではない。今日、SLBM にこのような能力を付与しているのは、トライデントD-5 を保有する米国のみであるが、高度な軍事技術を誇る米国でさえ、これには30 年近くの年月を費やしている。また、硬化目標即時破壊能力の開発と並行して、核弾頭を攻撃目標に運ぶ「再突入体」の複数個別誘導(MIRV )化を達成しなければならないが、MIRV 化を達成するには、ミサイルの飛翔実験を繰り返さなくてはならず、さらに年月を要しよう。SLBM のMIRV 化は必須条件ではないとの見解もあろうが、MIRV 化を断念すれば、極めて多くのSSBN を配備しなければならず、財政上、単弾頭SLBM で戦略的に意味のある戦力を構築しようとすることは現実的ではない。
以上、抑止力の視点から日本の核武装の成否を検討したが、政治的側面ではそれ以上の課題が待ち受けている。そのうち最も懸念されるのは、周辺国の反応である。日本の核兵器開発は、その意図がいかに防御的なものであれ、初期の段階から中国、ロシア、それに韓国(あるいは統一朝鮮)の警戒心と対抗策を呼び起こす危険が高い。その結果、日本が必要とするSLBM /SSBN 戦力を構築する以前の段階で、日本の安全が極度に脅かされる事態も想定されよう。核兵器はその能力や残存性如何で核保有国間の戦争を防止する力を有しているが、日本の場合、戦略的に意味のある核戦力を構築するまでの過渡期に深刻な脅威にさらされることが想定されるのである。また、日本の核武装が米国の国益に資するような国際情勢を想定し難いことから、日本の核兵器開発が米国の反発、対抗手段を招く危険があることも忘れてはならない。
NPT 体制の堅持・強化を中心とする核拡散防止が米国の重要な政策目標の1 つであることもさることながら、日本が米国の核攻撃を受けた国であることや、日本の核武装が前述のようにいずれ本格的な戦略核戦力の整備に向かわざるを得ないことなどを考慮すれば、米国が日本の核武装を容認するとは考えにくいのである。
また、日本は、米、英、仏、加、豪州、中国の6 カ国と協定を結び、天然ウランや濃縮ウランを輸入しているが、これらの協定では、輸入した核関連物資の使用を平和(民生)目的に限定されている。したがって、日本が協定に違反した場合、禁輸措置に直面することは明らかである。日本の総発電量の約30 %が原子力発電に依存していることを考慮すれば、こうした禁輸措置は、高速増殖炉を実用化し、核燃料サイクルを確立しない限り、日本経済に深刻な悪影響を及ぼすことが必定である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<完>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小生の意見は拙稿<8189>にて既に述べたので繰り返さないが、「防衛庁防衛研究所」 小川伸一氏の” 再燃している日本の核武装をめぐる議論について”を転載して諸氏の参考に供したい。なお、当該記事は長文の為<3回>に分けて紹介する。
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このように、唯一非脆弱な戦略核戦力として日本が期待できるのは、SSBN /SLBM 戦力であるが、その報復能力が「対都市報復能力」のみで終わる場合、抑止力には不安が残る。中露の都市に対して核報復の威嚇をかけても、両国が人口の集中している日本の都市群に対し再報復の威嚇をかけてきた場合、心理的にこれに耐えることができるか疑問が残るからである。説得力のある抑止力を備えるためには、対都市報復能力に加え、報復攻撃で相手の抗堪化された戦略核戦力を攻撃し、破壊できる「硬化目標即時破壊能力」をSLBM に付与しなければならない。この能力を確保しておけば、核エスカレーションの脅しに対する信憑性が高まり、それだけ抑止力も強化されるからである。
ところが、SLBM に硬化目標即時破壊能力を付与することは容易ではない。今日、SLBM にこのような能力を付与しているのは、トライデントD-5 を保有する米国のみであるが、高度な軍事技術を誇る米国でさえ、これには30 年近くの年月を費やしている。また、硬化目標即時破壊能力の開発と並行して、核弾頭を攻撃目標に運ぶ「再突入体」の複数個別誘導(MIRV )化を達成しなければならないが、MIRV 化を達成するには、ミサイルの飛翔実験を繰り返さなくてはならず、さらに年月を要しよう。SLBM のMIRV 化は必須条件ではないとの見解もあろうが、MIRV 化を断念すれば、極めて多くのSSBN を配備しなければならず、財政上、単弾頭SLBM で戦略的に意味のある戦力を構築しようとすることは現実的ではない。
以上、抑止力の視点から日本の核武装の成否を検討したが、政治的側面ではそれ以上の課題が待ち受けている。そのうち最も懸念されるのは、周辺国の反応である。日本の核兵器開発は、その意図がいかに防御的なものであれ、初期の段階から中国、ロシア、それに韓国(あるいは統一朝鮮)の警戒心と対抗策を呼び起こす危険が高い。その結果、日本が必要とするSLBM /SSBN 戦力を構築する以前の段階で、日本の安全が極度に脅かされる事態も想定されよう。核兵器はその能力や残存性如何で核保有国間の戦争を防止する力を有しているが、日本の場合、戦略的に意味のある核戦力を構築するまでの過渡期に深刻な脅威にさらされることが想定されるのである。また、日本の核武装が米国の国益に資するような国際情勢を想定し難いことから、日本の核兵器開発が米国の反発、対抗手段を招く危険があることも忘れてはならない。
NPT 体制の堅持・強化を中心とする核拡散防止が米国の重要な政策目標の1 つであることもさることながら、日本が米国の核攻撃を受けた国であることや、日本の核武装が前述のようにいずれ本格的な戦略核戦力の整備に向かわざるを得ないことなどを考慮すれば、米国が日本の核武装を容認するとは考えにくいのである。
また、日本は、米、英、仏、加、豪州、中国の6 カ国と協定を結び、天然ウランや濃縮ウランを輸入しているが、これらの協定では、輸入した核関連物資の使用を平和(民生)目的に限定されている。したがって、日本が協定に違反した場合、禁輸措置に直面することは明らかである。日本の総発電量の約30 %が原子力発電に依存していることを考慮すれば、こうした禁輸措置は、高速増殖炉を実用化し、核燃料サイクルを確立しない限り、日本経済に深刻な悪影響を及ぼすことが必定である。
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これは メッセージ 13431 (wake_turbulence1180 さん)への返信です.
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