併合時代 「愛国者」
投稿者: mcpaghd9 投稿日時: 2005/03/31 17:32 投稿番号: [8313 / 85019]
金素雲
「中央公論
1951年11月号」より。
1950年朝鮮戦争で避難民がごった返していた釜山の屋台街にて。
屋台街で、私は日本語を使った。主人は半生を満州で暮らした60がらみの老人、
おかみさんは片言も韓国語を知らぬ日本婦人である。
侠客風の、威勢のいい男が一人、私の日本語を聞きとがめて食ってかかった。
「お気に障ったかね。」
私が穏やかにそういうと、その男は眼を怒らしながら昂然と言い放った。
「オレは日本に怨みがあるんだ!」
「バカヤロウ!」と私が恫喝した。
「どんな怨みか言ってみろ。お前の顔に書いてあるぞ。
日本が旭日昇天の頃、尻尾がちぎれるほど振りましたと。
どうだ。オレの見立ては当るだろ。」
呆気にとられて「愛国者」は返事がない。心から腹が立つと楽な口が利ける。
私は続けて演説をぶった。
「怨みを知るほどの人間なら、敵が大怪我をしてブッ倒れた時、
土足で踏んずけるようなまねはせんもんだ。
相手の弱り目につけ込むような、そんな卑劣なヤツが、
もともと怨みなど知るわけないじゃないか。
どうだ、負けた日本を見下しながら仇呼ばわりするのは気持がいいだろ。
なにしろ相手がピンピンしているときは尻尾を振るので忙しかったからな。」
何か犬のようなうめき声を一つ残して、その勇ましいアニさんは
屋台から姿を消した。
彼にも一片の廉恥はあったのである。
間違っても日本びいきで啖呵を切った訳ではない。
そうした手軽な処方で「愛国者」がつくられてゆく自分の国の出鱈目さに
腹が立ったのである。
もとより日本を憎むに値する人の、正当な理由による憎しみを
私はとやかくいうのではない。
しかしながら真に怒りを知り、怨みを知る者は、敗戦日本を相手に
旧債を取り立てることに汲々としないであろう。
韓国にも韓国の良識はあってよいのである。
#8277「併合時代
広島にて」も読んで下さい。
これは メッセージ 8277 (mcpaghd9 さん)への返信です.
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