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河童14

投稿者: peekaboofrom8jo 投稿日時: 2004/10/07 00:37 投稿番号: [177 / 3394]
「あすこにある玉子焼きはなんと言っても、恋愛などよりも衛生的だからね。」
  実際また河童の恋愛は我々人間の恋愛とはよほど趣を異(こと)にしています。雌の河童はこれぞという雄の河童を見つけるが早いか、雄の河童をとらえるのにいかなる手段も顧みません、一番正直な雌の河童は遮二無二(しゃにむに)雄の河童を追いかけるのです。現に僕は気違いのように雄の河童を追いかけている雌の河童を見かけました。いや、そればかりではありません。若い雌の河童はもちろん、その河童の両親や兄弟までいっしょになって追いかけるのです。雄の河童こそみじめです。なにしろさんざん逃げまわったあげく、運よくつかまらずにすんだとしても、二三か月は床(とこ)についてしまうのですから。僕はある時僕の家にトックの詩集を読んでいました。するとそこへ駆けこんできたのはあのラップという学生です。ラップは僕の家へ転げこむと、床(ゆか)の上へ倒れたなり、息も切れ切れにこう言うのです。

「大変(たいへん)だ!   とうとう僕は抱きつかれてしまった!」
  僕はとっさに詩集を投げ出し、戸口の錠(じょう)をおろしてしまいました。しかし鍵穴(かぎあな)からのぞいてみると、硫黄(いおう)の粉末を顔に塗った、背(せい)の低い雌(めす)の河童(かっぱ)が一匹、まだ戸口にうろついているのです。ラップはその日から何週間か僕の床(とこ)の上に寝ていました。のみならずいつかラップの嘴(くちばし)はすっかり腐って落ちてしまいました。
  もっともまた時には雌の河童を一生懸命(いっしょうけんめい)に追いかける雄(おす)の河童もないではありません。しかしそれもほんとうのところは追いかけずにはいられないように雌の河童が仕向けるのです。僕はやはり気違いのように雌の河童を追いかけている雄の河童も見かけました。雌の河童は逃げてゆくうちにも、時々わざと立ち止まってみたり、四(よ)つん這(ば)いになったりして見せるのです。おまけにちょうどいい時分になると、さもがっかりしたように楽々とつかませてしまうのです。僕の見かけた雄の河童は雌の河童を抱いたなり、しばらくそこに転(ころ)がっていました。が、やっと起き上がったのを見ると、失望というか、後悔というか、とにかくなんとも形容できない、気の毒な顔をしていました。しかしそれはまだいいのです。これも僕の見かけた中に小さい雄の河童が一匹、雌の河童を追いかけていました。雌の河童は例のとおり、誘惑的遁走(とんそう)をしているのです。するとそこへ向こうの街(まち)から大きい雄の河童が一匹、鼻息を鳴らせて歩いてきました。雌の河童はなにかの拍子にふとこの雄の河童を見ると「大変(たいへん)です!
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