紫陽花亭日乗

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『蕭蕭』     沈従文

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/10/15 02:36 投稿番号: [658 / 735]
『蕭蕭』     沈従文(しん・じゅうぶん)

プロローグ
村人がソーナ(チャルメラ)を吹きつつ花嫁を迎える。
十二月になると、終日こんなことがよくある。

ソーナの後ろの一丁の花駕籠を、二人のよか衆が揺らさないように担いでいる。
駕籠の中に閉じこめられている娘は、ふだん身につけたこともないような
きらびやかな衣裳を着てはいるけれど、なんとまあ、
ずっとわんわん泣きじゃくっている。

このような幼い女の子の心中には、花嫁となって母親のそばから引き離され、
且つまた他人の母親となる予定であることから、必然的にこの先多くの
出来事が待ちうけていることへの覚悟はある。

これから、見たこともない男の子と一つ床に眠り、
嫁ぎ先の祖先を祀るようになるなんて、まるで夢のようだ。

こんなことを考え出すと、あたりまえのことだが、少しこわくなってくる。
だから、これまでも花嫁がそうだったように哭きたくもなろうというものだ。
そういうわけで哭いているのだ。

花嫁になっても哭かないものもいる。

蕭蕭は花嫁になっても哭かない。
この幼い女の子に母親はなく、幼いころから百姓をしている伯父の家で養育
され、朝から晩まで小さな竹籠をさげ道端や畔で犬の糞を拾い山菜を摘んだ。

嫁に行くということは、ただこの家からあの家に移動するだけにすぎなかった。

だからこの日になっても、この女の子は笑ってばかりいた。
この女の子は恥ずかしがりもせず、こわがりもしなかった。
この娘は何も知らないまま人の花嫁になったのだ。



★トンヤンシー(童養<女息>・ドウヨウソク)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%97%E3%82%A2


★>十二月になると、終日こんなことがよくある。<
>終日<   の原文は「成天」。
「一日中」とか「朝から晩まで」とかの意味です。
しかし、ここでは「連日」のほうが、意味のとおりがいいような気がします。
嫁とりは、農閑期に行います。もちろん旧暦(農暦)です。


つづく

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★原文   :   沈従文『郷土小説』上海文藝出版社, 「蕭蕭」より

翻訳は紫陽花です。

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