紫陽花亭日乗

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Re: 両雄倶には立たず――白川静と藤堂明保

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/09/01 01:43 投稿番号: [412 / 735]
  藤堂氏はつづけて書く。

  <しかし「上古漢語音韻論」の発達にともなって、じっさいにこれらの語が
上古にどう発音されていたかが明らかになると、いまや確信をもって、
どれどれが同系のことばであると言いきることができる。>

たとえば、「半、伴、判」と「班、斑」は、文字の系統はちがうが、音が同じ、
もしくは似寄りであるから、同系の語であることがわかる。

  <このように、上古漢語における語形をとらえて、数多くの漢語を分類し
「帰納法」を用いてその基本義を明らかにしていくのが、古代語の言語学
的研究の正道なのである。
このさい、とくにおことわりしておくが、ことばの本質は「語音と特定の
意味との結びつき」という点にあるのであって、文字というのは、その
ことばを視覚に訴えて表わす道具にすぎない。(・・・)
とりわけ漢字は、表意文字だとはいっても、かなり漫画的なものであるから、
その表わす構図を過大に評価してはならない。>

この漫画的ということについて、藤堂氏はつづけて「伏」の字を例として
こう書いている。

  <たとえば、「伏」という字は「人+犬」を組み合わせて、飼主のそばに
飼犬がぴたりとくっついた姿を漫画化しただけで biok (伏)ということばは、
ぴったりとくっつくという基本義を含むにすぎない。>

つまり、「伏」という字は、この字だけを見れば「人のそばに犬がいる」
という意味をあらわしているかのようだが、そうではない。
何かのそばに何かが「ぴったりつく」というのが「ことば」の意味なのだから、
図(漫画)としては何のそばに何がついている絵をかいてもよい。
このばあいはたまたま人のそばに犬がついている絵をかいただけのこと、
というのである。

  このことについては、藤堂氏と同じ観点に立つ加納喜光さんがわかりやすく
説いてくれているので御紹介しよう。

  <漢字の「義」というと漢字に意味がありそうだが、実は漢字(一つの図形素
で表される)は記号素(意味のある最小単位の漢語)の代替記号であったから、
意味は記号素、つまり漢語の意味なのである。
ここがたいへん重要なところで、現代の文字学者も混乱している。
意味があたかも漢字にあると錯覚して漢字の形を分析して意味を
導こうとする。ここから間違いが起こる。>
(『漢字の成立ち辞典』東京堂出版)

漢字に意味があるのではなく、漢字があらわしている「ことば」に
意味があるのだ、というのである。
なお右文中の「現代の文字学者」はたぶん白川静氏を指している。


つづく

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★今回、書かれていることは非常に重要なポイントです。
学者ではなく、編集者とか一般の読者では自分では思考不可能なところ
であろうと思います。

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