紫陽花亭日乗

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刺客列傳 第五話 「荊軻」 承の段 7 

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/10 00:20 投稿番号: [285 / 735]
頃之未發。太子遲之、疑其改悔。乃復請曰。日已盡矣。荊卿豈有意哉。
丹請得先遣秦舞陽。荊軻怒叱太子曰。何太子之遣。往而不返者豎子也。
且提一匕首、入不測之彊秦。僕所以留者、待吾客與倶。
今太子遲之請辭決矣。遂發。

これを頃(しばらく)するも未だ發せず。
太子これを遲しとし、その改悔を疑ふ。
乃ち復た請ひて曰く、日已に盡きたり。荊卿、豈に意有らんや。
丹請ふ先ず秦舞陽を遣るを得ん、と。
荊軻怒り太子を叱して曰く、
何ぞ太子、これを遣る。往きて返らざらん者は豎子(じゅし)なり。
且つ一匕首を提(ひっさ)げて、不測の彊秦に入る。
僕の留まる所以は、吾が客を待ちて與に倶にせんとすればなり。
今太子これを遲しとする。請ふ辭決せん。遂に發す。


このことがあってしばらく経ったが荊軻はまだ出発しようとしなかった。

太子丹は、荊軻の出発が遅いので、荊軻が変心したのではないかと疑った。
そこでまた荊軻に請うて言った。

「日はもう限界です。荊卿、何かお考えがあるのでしょうか。
わたしは、先に秦舞陽を遣ってはどうかと思うのですが」と。

それを聞いて荊軻は怒り、太子をどなりつけてこう言った。

「太子はあんな奴を使いに遣ると云われるのか。
ひとたび行って使命を果し戻ってくることを思わないようなのは、
小僧っ子のやることですぞ。
それに一匕首を提(ひっさ)げて、心も知れぬ、何があるかわからない
強暴の秦国に入るのだ。
わたしが留まってまだ出立しないわけは、わたしの客を待って、
その者と同行したいと思っているからこそなのです。
今、太子は、わたしの出発を遅いと云われる。
それではこれでおいとまいたしましょう」

こうしてついに荊軻は出立した。


つづく

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