紫陽花亭日乗

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刺客列傳 第五話 「荊軻」 承の段 6 

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/09 02:26 投稿番号: [283 / 735]
太子聞之、馳往伏屍而哭、極哀。既已不可奈何。乃遂盛樊於期首函封之。
於是太子豫求天下利匕首、得趙人徐夫人匕首。
取之百金、使工以藥<火卒>之、以試人、血濡縷、人無不立死者。
乃装爲荊卿。燕國有勇士秦舞陽。年十三殺人。人不敢忤視。
乃令秦舞陽爲副。荊軻有所待、欲與倶。其人居遠未來。而爲治行。


太子これを聞き、馳せ往きて屍に伏して哭す。哀を極む。
既に已にいかんともすべからざれば、乃ち遂に樊於期の首を盛り
函にこれを封ず。(or函に盛りこれを封ず)
是に於て太子、豫(あらかじ)め天下の利匕首(りひしゅ)を求め、
趙の人、徐夫人の匕首を得たり。
これを百金にて取り、工をして藥を以てこれに<火卒>(や)かしめ、
以て人に試みるに、血濡るること縷(いとすじ)にして、
人立ちどころにして死せざる者なし。
乃ち装を爲(おさ)めて荊卿を遣る。
燕國に勇士秦舞陽有り。年十三にして人を殺す。
人、敢えて忤視(ごし)せず。乃ち秦舞陽をして副たらしむ。
荊軻、待つ所有り。與(とも)に倶(とも)にせんと欲す。
其の人、遠くに居りて未だ來たらず。而るに治行(ちこう)爲(な)れり。


太子は樊於期の自刎したことを聞いて、
急遽駆けつけ屍に伏して声をあげて泣いた。
その泣き方は哀切きわまりないものであった。

ここにいたっては最早いかんともしがたいことであり、
やむなく樊於期の首を函(はこ)に納めて封をした。

このとき太子は、あらかじめ天下の鋭利な匕首(りひしゅ)を捜し求め、
趙の人である徐夫人(男性)の匕首を見つけていた。
これを百金で買い取り、刀工に、毒薬をこの匕首に<火卒>(にら)がせ、
それを人に試してみると、血がひとすじ滲んだくらいで、
即死しない者はいなかった。

そして旅支度を整えて荊卿を出立させようとした。

燕の国に勇士・秦舞陽(しんぶよう)という者がいた。
十三歳のときにもう人を殺した。
世間の人で、逆らって正面から秦舞陽を見ることのできる人はいなかった。

そこでこの秦舞陽を介添役として遣(や)ることにした。

荊軻は、人を待っていた。
その人とともに秦に行きたいと考えていたのである。

その人物は遠方に居てまだ到着しないうちに旅の準備が整ってしまった。


つづく

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