紫陽花亭日乗

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飲酒 其七     陶淵明

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/06 01:22 投稿番号: [271 / 735]
8月2日付   編集手帳

  憂いを忘れる、と書いて「忘憂」は、酒の異称でもある。

中国の詩人、陶淵明が『飲酒詩』のなかで酒を「忘憂の物」と
呼んだことに由来するという

◆つらい出来事、嫌な記憶は早く忘れるに限る――
とばかりに四季を問わず「忘憂」のお世話になっている身には、
少々きまりの悪い写真をヨミウリ・オンラインで見た。
夏の甲子園に2年連続の出場を決めた秋田県代表・能代商の
室内練習場である

◆能代商は昨年の夏、初戦で鹿児島実業(鹿児島)に「0対15」の
惨敗を喫した。
そのイニングスコアが、横断幕のように練習場の壁に貼られている

◆悔しさを雪辱の糧とするためという。
痛恨の出来事を目に焼き付け、胸に刻む。
忘憂ならぬ“刻憂”かも知れない。
思えば、日本人一人ひとりが“刻憂”のなかにいる。
6日の開幕に向けてきのう、49代表が出そろった。
いつもながらの、そして、いつもとはほんの少し何かが違う
夏の甲子園になることだろう

◆小欄も「忘憂」の器をしばし遠ざけて能代商ナインを見習い、
出来の芳しくなかった記事を職場の壁にでも貼ってみようか…。
候補が多くて、ちょっと迷う。

(2011年8月2日01時39分 読売新聞)

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飲酒   其七       陶淵明(東晉・365〜427)


秋菊有佳色       秋菊   佳色有り
①露②其英       露にぬれし其の英(はなぶさ)をとる
汎此忘憂物       此の忘憂の物に汎(う)かべて
遠我遺世情       我が世を遺(わす)るるの情を遠くす
一觴雖獨進       一觴(いっしょう)獨り進むと雖も
杯盡壷自傾       杯盡きて壷自(おのず)から傾く
日入羣動息       日入りて羣動(ぐんどう)息(や)み
歸鳥趨林鳴       歸鳥   林に趨(おもむ)いて鳴く
嘯傲東軒下       嘯傲す   東軒の下(もと)
聊復得此生       聊(いささ)か復た此の生を得たり

①「衣部」の七画「ユウ」の字
②「てへん」+「双」+「双」(双は上下に)


秋の菊がみごとに花開いた
露にぬれたその花びらをつんで
「憂いを忘れる物」といわれるこの酒に浮かべると
世俗から遠く離れたわたしの心がいっそう深まるようだ
独酌でちびりちびりやっているが
やがて酒がなくなって、壷はひとりでにごろんと倒れる
日が暮れて、もろもろの動きもやみ
鳥たちも林の中のねぐらに鳴きながら帰って行く
わたしも東の軒下で心のびやかに口笛を吹く
今日もまずまず無事に過ごせたのだ


★菊の花は不老長寿の薬

★「忘憂」は酒の異名

★松枝茂夫『中国名詩選』中, 岩波文庫

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