紫陽花亭日乗

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Re: 星落秋風五丈原     土井晩翠

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/25 21:31 投稿番号: [189 / 735]
その三峽の道遠き
永安宮の夜の雨      
泣いて聞きけむ龍榻に
君がいまわのみことのり   
忍べば遠きいにしえの   
三顧の知遇またこゝに
重ねて篤き君の恩     
諸王に父と拜されし    
思よいかに其宵の
邊塞遠く雲分けて      
瘴烟蠻雨ものすごき    
不毛の郷に攻め入れば
暗し瀘水の夜半の月     
妙算世にも比なき     
智仁を兼ぬるほこさきに
南蠻いくたび驚きて     
君を崇めし「神なり」と

南方すでに定まりて     
兵は精しく糧は足る    
君王の志うけつぎて
姦を攘はん時は今      
江漢常武いにしへの    
ためしを今にこゝに見る
建興五年あけの空      
日は暖かに大旗の     
龍蛇も動く春の雲
馬は嘶き人勇む       
三軍の師隨へて      
中原北にうち上る
六たび祁山の嶺の上     
風雲動き旗かへり     
天地もどよむ漢の軍
偏師節度を誤れる      
街亭の敗何かある     
鯨鯢吼えて波怒り
あらし狂うて草伏せば    
王師十萬秋高く      
武都陰平を平げて
立てり渭南の岸の上

拒ぐはたそや敵の軍     
かれ中原の一奇才     
韜略深く密ながら
君に向はんすべぞなき    
納めも受けむ贈られし   
素衣巾幗のあなどりも
陣を堅うし手を束ね     
魏軍守りて打ち出でず

鴻業果し收むべき      
その時天は貸さずして   
出師なかばに君病みぬ
三顧の遠いむかしより    
夢寐に忘れぬ君の恩    
答て盡すまごゝろを
示すか吐ける紅血は     
建興の十三秋なかば
丞相病篤かりき


つづく
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