紫陽花亭日乗

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詩四首(四)     蘇武

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/23 23:49 投稿番号: [177 / 735]
詩四首(四)       蘇武(漢・前142〜前60)


旅立つ人が友に贈る詩
燭燭晨明月       燭燭(しょくしょく)たり晨(あした)の明月
馥郁秋蘭芳       馥郁として秋蘭芳し       ★
芬馨良夜發       芬馨   良夜に發し
随風聞我堂       風に随って   我が堂に聞ゆ
征夫懐遠路       征夫   遠路を懐ひ
遊子戀故郷       遊子   故郷を戀ふ
寒冬十二月       寒冬十二月       ★
晨起踐嚴霜       晨(あした)に起きて嚴霜を踐(ふ)む
俯觀江漢流       俯して江漢の流るるを觀(み)
仰視浮雲翔       仰いで浮雲の翔るを視る
良友遠別離       良友   遠く離別し
各在天一方       各々   天の一方に在り
山海隔中州       山海   中洲を隔て
相去悠且長       相去ること悠にして且つ長し
嘉會難再遇       嘉會   再び遇ひ難く
歡樂殊未央       歡樂   殊に未だ央(つ)きず
願君崇令紱       願はくは君   令紱を崇(たか)くし
随時愛景光       時に随ひて   景光を愛せよ

照り輝くありあけの月
かぐわしく秋の蘭は香る
その芳香は君と会するこの良夜に発して
風のまにまにわが室へとただよってくる
月光も蘭香も人の感をそそって別離の情を深からしめる
旅立つ人は行く手の長い道中を思いわずらい
異郷にとどまる遊子は故郷を恋いしたう
ときは寒冬の十二月
朝まだきに起き、ひどい霜をふんで出て見る
俯しては地に江漢の水の流れゆくを観(み)
仰いでは空に浮雲の飛び去るを眺めるにつけ
良友と遠く離れ、別れ別れて
おのおの天の一方に住む身となるのも、またこの江水浮雲に異ならぬかと思われる
海山を遠く隔て
友と別れてゆく旅路は果てしもなく遠い
思えば、また会うよき日は期しがたかろう
歓楽はいつまでもつきない、しかし出発は迫っている
どうか君よ、美徳を積んで
つねづね光陰を惜しんで自愛せられよ

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きらきらと   あかつきの月
ふくいくと   秋の蘭の香り
かぐわしさは   晴れた夜に舞い立ち     
風のまにまに   わが座敷にかおる
旅立つものは   前途をおもい        
さすらい人は   故郷をしたう
寒い冬の   十二月             
朝はやく起き   厳しい霜をふまん
大川の   流れを見おろし          
浮き雲の走るを仰ぎ見
よき友も   はるかに別れて         
それぞれに   天の片すみに
山と水は   都をへだてて          
遠くはるかに   別れゆく
楽しい語らいも   二度とあるまい      
この楽しみは   今しばし続こうが
君に祈る   人徳を高めて          
いついつまでも   自愛せんことを


★「秋蘭」と「寒冬十二月」。季節の表現に矛盾がある。★印の箇所。
偽作説の根拠の一つ。

★解釈、上段は、内田泉之助『古詩源』上, 集英社, 漢詩大系4
★解釈、下段は、伊藤正文・一海知義編訳『漢・魏・六朝詩集』
平凡社, 中国古典文学大系


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