紫陽花亭日乗

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Re: 仏説観無量寿経  王舎城の悲劇

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/18 20:52 投稿番号: [118 / 735]
〔原文〕
時有一臣、名曰月光。聰明多智。及與耆婆、爲王作禮、白言、
大王、臣聞毘陀論經説、劫初已來。有諸惡王。
貪國位故、殺害其父、一万八千。
未曾聞有無道害母。王今爲此殺逆之事、汚刹利種。
臣不忍聞。是栴陀羅。不宜住此。
時、二大臣、説此語竟、以手按劔、郤行而退。
時、阿闍世、驚怖惶懼、告耆婆言、汝不爲我耶。
耆婆白言、大王、愼莫害母。
王聞此語、懺悔求救、即便捨劔、止不害母。
勅語内官、閉置深宮、不令復出。


〔訓読〕
時に、一臣有り、名づけて月光(ガッコウ)と曰う。
聡明多智なり。耆婆(ギバ)とともに、王の爲に禮を作して、
白(もう)して言う。

「大王よ、臣訊く。<毘陀論經(ビダロンキョウ)>に説くを。
『劫初(ゴウショ)より已來(このかた)、諸々の惡王あり。
國位を貪るが故に、その父を殺害(セツガイ)するもの一万八千。
未だ曾て、無道に母を害するもの有るを聞かず。
王、今、この殺逆の事を爲さば、刹利種(セツリシュ)を汚さん。
臣、聞くに忍びず』。
是れ栴陀羅(センダラ)なり。宜しく、ここに住むべからず。」

時に二大臣は、この語を説き竟(おわ)り、手を以って剣を按(アン)じて、
却行(キャクギョウ)して退く。

時に、阿闍世は驚怖(キョウフ)惶懼(コウク)し、耆婆(ギバ)に告げて言う。
「汝、我が爲にせざるや」と。

耆婆、白(もう)して言う。「大王よ、愼んで母を害すること莫かれ」

王、この語を聞きて、懺悔求救(グク)し、即便(すなわ)ち劔を捨て、
止(とどま)りて母を害せず。
内官に勅語し、深宮(ジング)に閉置して、復(ま)た出さしめざりき。


「解釈」
そのとき、王の側近に、月光(ガッコウ)という名の聡明・多智なる
家来がいた。
月光は耆婆(ギバ)という医者とともに、王に拝礼をして、
このように言った。

「大王よ、わたくしどもはこのように聞いております。
毘陀論經(ビダロンキョウ)(ベーダ)ではこのように説いております。

『この世の中が始まって以来、多くの悪王というものが出現しました。
国の王位をとりたいと思ったが故に、自分の父親を殺害した王が
一万八千人おります。
しかしながら今だ嘗て、無道にも母親を殺害したというものがあるのを
聞いたことはありません』
もし王が今、この母親殺しの事をなすならば、政治的な支配階級である
刹利種(セツリシュ)を汚すことになります(我々の名折れになります)。
わたしどもは、こんな話は聞くに忍びません。
これは最下層階級の栴陀羅(センダラ)の行いです。
とてもこんな所にはおられません」と。

ときに二人の重臣が、この話を説き終えて、
(もしも王が自分たちに斬りかかってくるならば刃向かうという意思表示に)
手で剣を押さえながら、あとずさりして王の前から退いた。

そのとき家臣に反抗された阿闍世は、驚き怖れて、
耆婆(ギバ)に告げて言った。

「おまえは、わたしのために働いてはくれぬのか
(わたしの味方になってはくれぬのか)」と。

すると耆婆は、このように申し上げた。

「大王よ、どうか、御母上君を殺すことだけはおやめください」と。

阿闍世王は、それを聞いて、「ああ、わたしが悪かった」と罪を悔い改め、
どうしたら救われようかと救いを求め、そこで剣を捨て、
母を殺害することは止めた。

だが宮中に勤めている役人たちに命令して、母を宮殿の奥深く幽閉し、
また再び外出できないようにしてしまった。


つづく

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