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朝日新聞社説(1)

投稿者: jgeilsbandfreek 投稿日時: 2006/07/30 22:28 投稿番号: [2235 / 10735]
瞬発力外交の負の遺産   小泉政権、閉幕へ

  小泉政権ができて5カ月後の01年9月11日、米国を同時多発テロが襲った。それ以前とそれ以後で、世界の景色は大きく変わった。先が読めない国際政治の荒海に、外交経験のほとんどない小泉氏がぶっつけ本番でこぎ出したのだった。

  この5年を振り返って、二つの印象的な場面を思い出す。

  ひとつは、同時多発テロ直後の訪米だ。米社会の衝撃がさめやらないなかで、首相はブッシュ大統領に「私たちは米国の味方だ」と手を差し伸べた。

  その1年後、北朝鮮の平壌に乗り込み、厳しい表情を浮かべて政府専用機のタラップを下りた。国交のない北朝鮮への電撃訪問だった。拉致被害者や家族を取り戻す大きな成果をあげた。

●世論とらえた決断力

  いずれも日本外交のイメージを打ち破る大胆な身のこなしだった。周到に準備を重ねて決断する従来の外交と比べ、小泉外交は政治的勘に支えられた瞬発力の世界である。

  冷戦期も対立や紛争は絶えなかったが、世界政治の大枠は安定していた。その時代の日本外交が状況対応型といわれ、官僚主導の積み上げ方式がまかり通ったのは自然なことでもあった。

  だが冷戦後、とりわけ9・11テロ後の世界は一気に流動化した。そこで求められるのは危機対応型の外交だ。スピード感のある決断力がものを言う。

  白黒をはっきりさせる「小泉流」の手法は、外交の面でも時代の空気と要請にぴったり合っていたと言えるだろう。

  首相の外交の最大の柱は、米国との同盟を強化する路線だ。アフガニスタン戦争、イラク戦争と米国に付き従い、自衛隊の役割強化などでも最大限、注文に応えようとした。

  不安定な東アジアの情勢を見れば、米国との同盟の重要性は広く認識されている。ただ、ことさらその同盟に踏みこんでいった首相の狙いは何だったのか。

  北朝鮮の核・ミサイルや中国のめざましい台頭などを背景に、国民の間に漂いつつあった漠然とした不安を感じ取ってのことではなかったか。

  自民党政治にうんざりしていた有権者の気持ちを「自民党をぶっ壊す」という言葉でつかんだのと似た、首相独特の感度が働いたように見える。

  だが、マイナス面も小さくなかった。平和主義を掲げる日本が、大義のないイラク戦争を即座に全面支持したことは、反対を押し切って自衛隊を派遣したこととともに歴史に苦い記録として残る。アラブ世界での日本のイメージを傷つけたことも無視できない。

  対米重視が意味を持つのは米国が世界の安定装置として機能していたからだ。だが、米政権の単独行動主義は世界の安定を危うくした。米国が判断を誤るとき、同盟国としてどうただすか。日本が準備してこなかった問いが残された。
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