朝鮮を笑う

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斜め上の雲 99

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2007/01/08 20:24 投稿番号: [1918 / 2847]
  二〇〇〇年の夏、金大中大統領をきびしく批判するようになった錫元のもとを一人の男がたずねてきた。
「えらく怒っているようだな、錫元君」
「閣下、どうしてもがまんがならないのです」
  錫元を「君」とよび、錫元が閣下とよぶのは、いまや白善菀しかいない。
  白は交通部長官を辞めたあと、肥料や化学工業会社の社長を歴任して日本からのプラント導入に尽力し近代化に貢献したが、八〇年にすべての職をしりぞいてからは悠々自適の生活をおくっている。
「今、大韓民国は民族至上主義に酔っぱらっているかのようです。だれかが水を浴びせないといけません」
  錫元は、いった。
「たしかに、国軍捕虜を置き去りにしたまま工作員をご丁寧にお返しするというのは、国軍にとっても侮辱でしかないな」
  国軍捕虜とは、朝鮮戦争で北にとらわれたままの捕虜のことである。かれらの存在を忘却したまま、抑留している北の工作員たちを送還するというのはどういうことであろうか。また、北朝鮮の犯行であることが明白なラングーン爆破事件や大韓航空機爆破事件といった事件の被害者遺族もいる。大統領はかれらの存在、感情を無視して南北融和という仲良しごっこに興じているとしかおもえない。
「しかし、これ以上批判すれば、軍服を脱ぐはめになるかもしれんぞ」
「望むところです。わたしは将軍にならって大統領に直諫するつもりでいます」
  朝鮮戦争以前、予算不足にくるしむ韓国軍は連隊ごとに独立採算制をとり、米ソ軍政当局の合意のもとで成立した北との物々交換の交易で食いぶちをかせいでいた。アメリカ産の薬品や自動車タイヤなど軍需物資を輸出し、スケソウダラを輸入するというものであった。
  第一師団長として着任した金錫源は、国防上の利害をわきまえぬ愚行として激怒し、その非を李承晩大統領に直言したことで解任され予備役に編入された。
  錫元はその金錫源にならうという。
  白は大きくうなずいた。

  まったく、この時期の韓国の親北化は尋常ではなかった。
  韓国人が集団で昂奮するとき、同時代からみても、ちょっと理解のとどきかねる現象がおきる。
  赤いネッカチーフをまいた北朝鮮の少年少女ふうの子供が、共産少年団式に右手を顔の前にあげて挙手の礼をする写真を広告につかった企業などはまだましなほうで、教育現場では、これまでの北に対する批判的、否定的な教育を一転し、小学生の使う副教材に首脳会談の写真を掲載することを決定した。会談の翌月のことである。
  そればかりか、
「日本は南北統一に反対している」
  というなにやら別宇宙のはなしのような対日批判まで飛びだすようになった。南北が統一すれば北東アジアの強大国になるため、日本はそれをおそれて統一を妨害しているというのである。
  だが、この時期の多くの日本人は、
「南北統一?同じ民族が平和裡にいっしょになるというのはよいことですね」
  という程度の感想しかもっていなかった。日本を意識して身もだえするような韓国人の願望はむくわれることもなく、たれも韓国を特別の存在として意識などしていなかったのである。
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