朝鮮を笑う

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斜め上の雲 77

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/08/24 19:42 投稿番号: [1729 / 2847]
「しかし考えてみれば」
  と、華秉は急に話題をかえる気配を示したが、そのままだまってしまった。
  世実はしばらく華秉のつぎの言葉を待ったが、やがて問いかえした。
「なんのことだ、しかし考えてみれば、とは?」
「いや、な。つまり、考えてみれば、決まりきったみちにとらわれることはないということさ」
「なにを言いだしたのだ」
「ウリはな」
  と、華秉はいった。
「世実とおなじで、うまれたからにはウリナラ一になりたい」
「たれでもだ」
  と、世実はいった。それが韓民族の共通のねがいであろう。ひるがえっていえば、これは、「世界第○位」「世界初の○○」「○○先進国」「○○宗主国」といった看板や文句に対して病的に執着するのと同根なのであろう。

「しかし、今ある学問分野や職ではむずかしい」
  と、華秉はいった。
「そりゃそうだろう」
「国土や学問が日帝に破壊されていた光復直後、まともな学者がほとんどいなかったころでこそ、希少価値があって出世も立身もできた」
「なるほど」
  世実は、大まじめな顔でうなずいた。
  そのとおりだとおもった。一つの学問を拓くにしても、草創期の連中はとくであり、その学問を外国からもってかえっただけでもウリナラ一の権威になれた。
「たとえば錫元兄上さまでもそうだ」
  錫元は、韓国に軍事研究学がなかったころにその学問を拓いた。権威として安住するのではなく、今も第一線でその学問に没頭している。

「ウリたちは遅くうまれすぎたのだ」
  と、世実はいった。
「しかし、先人のやらぬ分野がまだあるはずだ。それが既存の学問のわくに入らないものであっても」
  と、華秉はいう。
「たとえば、世実のいう歴史研究にしても、現在の学界には欠けているものがあるではないか」
  民主主義の観点からの歴史研究がそれだ、という。民主主義じたいがこれまで存在しなかったため、それにもとづいた研究もあるはずがない。
「しかし、ウリには考えを結晶化させる力が・・・・・・」
「しかしもなにもない。民主化運動すら参加できなかったウリたちは道なきところに道をひらくしかない。できるできないは二のつぎだ」
  華秉は、まくしたてるようにいった。

「ならば、華秉はどうするのだ。なにかあたらしい道はあるのか」
  熱気にあてられて首筋までキムチ色にした世実がきいた。
「あるとも。兄上さまとちがって韓民族が真に自立できる道をさがすために軍事研究をやる」
「軍事研究?」
「そうだ。ウリは大学にはゆけない。養父上さまにはもう学資をたよれないのだ。学費のかからない学校といえば士官学校しかない」
  しかも華秉は視力がよくなく船酔いするたちであったため、陸軍をえらぶしかない。その答えに、世実はそっと下をむいた。
「世実、きみは学問で韓国の発展する道をさがしてくれ。ウリは軍事でそれをさがす」
  ふたりの目に、おもわず涙がにじんだ。
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