朝鮮を笑う

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解説:斜め上の雲 76

投稿者: toaniuniu05 投稿日時: 2006/08/23 23:40 投稿番号: [1728 / 2847]
元ネタは1巻「七変人」、大学予備門の真之と子規が悩むところです。以下原文。

≫秋が深みはじめたある夜、子規は真之がその夜の勉強をおえたころを見はからって、
「相談があるんぞな」
  と、もちかけた。その一件である。
「あしの頭は、哲学にむいとるか」
  と真之にいった。
  真之は、くびをかしげた。ものごとの追求力は、子規は常人よりすぐれている。
「しかし、考えを結晶させる力が乏しいようだな」
  と、真之はいった。真之にいわせると、「考え」というものは液体か気体で、要するにとりとめがない。その液体か気体に論理という強力な触媒をあたえて固体にし、しかも結晶化する力が、思想家、哲学者といわれる者の力である。その力がなければ、その方面にはすすめない。
「それが弱そうじゃな」
  と、真之はいった。
  それをきいて子規はみるみる顔を赤くし、自己弁護をはじめた。
「弱いのではない。あしの胸中には、結晶化をさまたげる邪魔物があるのじゃ」
「邪魔物とは、なんぞ」
「文芸じゃが」
  と、子規はいった。
  文芸とは、哲学とはおよそ両立しがたい精神の作用で、せっかく結晶しようという考えが、文芸によってさっと流されてしまう。
「詩歌小説というものじゃ。もはやいまでは小説なくては夜もあけぬような気持になっている」
「されば、それをやればよかろうが」
  と真之がいうと、子規はにがい顔をした。(中略)

≫語りあっているうちに、子規が急に、
「淳さん、顔色のすぐれぬのはどうしたわけかねや」
  と、伊予弁できいた。
  真之は、苦笑し、
「じつは、あしもな」
  なやんどるのよ、といった。
  真之もよく似た悩みで、大学予備門にすすんだものの、このままでいいのか、ということであった。(中略)

≫これが、真之の悩みの最大課題である。結局、学費無用の学校にゆきさえすれば即座に解決することであった。
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