朝鮮を笑う

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斜め上の雲 68

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/08/02 21:08 投稿番号: [1690 / 2847]
  朴正煕暗殺は突発的なできごとであり、とうてい綿密に計画されたものではなかった。その点、朴がひそかにみずからをなぞらえていたかのようにおもえる大久保利通の死より、織田信長もしくは足利義教の死にやや近いであるといえよう。金戴圭は明智光秀や赤松満祐のように、おのれの前途ともに、朴をもくだいたのである。

  安全家屋を飛び出した金戴圭中央情報部部長は、指示どおり大統領警護処長、副処長と三人の警護員を射殺していた腹心の二人と合流し、隣接する洋館に入った。
  金は、そこで食事をとっていた鄭昇和陸軍参謀総長と金正ショウ(火言火の下に又)中央情報部第二次長補に、
「大統領に変事がおきた」
  といい、鄭総長をうながしてともに陸軍本部の地下防空壕にむかった。鄭総長は、国防部長官、海軍参謀総長ら軍首脳を防空壕に招集した。

  一方、金桂元秘書室長は、首都陸軍病院の大統領専用病室で朴の死を確認すると、青瓦台にもどって崔圭夏総理など閣僚に至急集合するよう連絡した。閣僚を前にして金室長は、
「大統領に変事がおきました。閣議をひらかなくてはなりません」
  といい、鄭らのいる陸軍防空壕へ閣僚を案内した。
  合流したかれらはいったん首都病院にゆき、大統領の死亡と遺体を確認したのち、防空壕でひらかれた閣議で戒厳令の施行を決定し、憲法の規定によって崔総理が大統領代行に就任した。

  この時点では大統領の死亡だけが確認されており、金部長が暗殺犯人であることを知るのは金秘書室長と、かれに事情をおしえられた崔総理だけである。
  金秘書室長は、当日、鄭総長が金部長の招待をうけていたことを知っていた。金部長が大統領との宴席にいったため、鄭は安全家屋に隣接した建物で金正ショウ中央情報部第二次長補と先に食事をはじめていたのである。また、鄭が金部長にうながされて軍首脳を招集したのも気になる。
  そればかりか、この場にはその金部長がなにくわぬ顔でおり、ずっとかれを監視している。そのふところには大統領を撃った拳銃がある。
(中央情報部と軍部が組んだ暗殺だったのではないか)
  金秘書室長はそう疑い、真実をいわず様子をうかがうことにした。

  だが、軍首脳は本当に事情を知らないようであった。事前に共謀していればもっと手ぎわよく処理をすすめるはずだし、まず生き証人である金秘書室長をほっておくことはない。
  意を決した金秘書室長は、金部長が席を外したわずかなすきをとらえて鄭総長と国防部長官を別室に連れ出し、真実を耳打ちした。鄭は即座に兵力集結を命令し、保安司令官全斗煥少将と憲兵監に金戴圭の逮捕を指示した。

  全は明け方に金戴圭の逮捕に成功し、間髪をいれずに中央情報部を急襲、制圧して武装解除させた。大統領暗殺は中央情報部によるクーデター計画の一環ではないかという疑いがいぜんとして存在していたからである。
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