朝鮮を笑う

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斜め上の雲 64

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/07/27 14:22 投稿番号: [1658 / 2847]
  じつを言えば、この時期、北朝鮮の経済はすでに破綻しかけていた。
  七二年の南北共同声明時に韓国の成長をまのあたりにしたことで、外資の導入、プラント輸入による重工業化をはかったのだが、道路、鉄道、港湾設備、電力供給などといったインフラを整備、もしくは整備しつつ平行しておこなうべきところを「七〇年代戦闘速度」「電撃戦」と称してひたすら拙速にはしった。
  このため、七三年の石油ショックによって、有力な輸出品目である農産物と非鉄金属の価格が下落したさい、計画は頓挫し厖大な借金だけがのこった。

  ついでながらいうと、北朝鮮の標語、表現のたぐいには、
「百日戦闘」
「穀物八百万トン高地占領」
  など、軍事色がひじょうに濃い。強制の大衆動員による奉仕的な労働強化運動を「戦闘」とよび、目標を「高地」、目標の達成・完成を「占領」という。軍国主義そのものであろう。

  経済破綻には、重要な原因がほかにもあった。
  共産主義国特有の計画経済である。建国直後の復興時には一定の成果をあげたものの、徹底した縦割り主義と締めつけのきびしいノルマ主義によって、しだいに経済は停滞していった。
  だが、計画経済の七ヵ年計画にしても六ヵ年計画にしても、その公式発表には飛躍的な経済成長をあらわす数値と美辞麗句のみがならんだ。もっとも、その数字すら好成績の年、好成績の分野にかぎって発表されていたのだが。
  しかも、計画最終年にいたって異常なほど高い工業成長率がでてくるというできの悪い粉飾決算まがいのものであった。
  経済の実態と数値の乖離による病理が進行しきったところに、石油ショックをくらったといっていい。

  金日成は、この局面を打開するため、個人崇拝の強化をはかった。体制の不可侵化によって批判を圧殺するのがねらいである。朝鮮戦争のときとちがい、責任をかぶせて粛清できる相手がいなかったからでもある。
  厖大な借金については、いっさい無視した。
  つまりは、居直った。
  日朝貿易業者代表団と朝鮮貿易銀行のあいだでは、決済繰り延べの合意書が再三交わされたが、結局は空手形となった。対日債務だけでなく対欧債務もそうであった。
  日本政府は業者に輸出保険をはらい、西欧の百四十の銀行からなる銀行グループは在欧北朝鮮資産の凍結、差押えの態度をしめした。

  このような窮状によって在外公館への送金すら支障をきたすようになった北朝鮮は、逆に本国に送金するよう公館に指示を出した。
「外交官特権を利用せよ。外貨をかせぐには手段を問わない」
  つまりは密輸を奨励したのである。
  その結果、七六年十月にはデンマーク政府が北朝鮮大使館全員を麻薬密輸容疑で国外追放し、スウェーデンなど北欧諸国がそれにならった。
  にもかかわらず、この年、北朝鮮は、
「一人あたりの国民所得は、七四年度実績で一千ドルをこえた」
  と、誇らしげに発表した。
  もはや、日本の進歩的文化人をのぞいて、たれもこれを信じるものはいなかった。
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