朝鮮を笑う

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斜め上の雲 60

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/07/19 01:14 投稿番号: [1642 / 2847]
  帰国後、錫元は大統領執務室によばれた。
「君には戦史と軍事史を研究してもらいたい」
  朴正煕はそういって、戦史研究室への復帰を命じ、キャビネットから現金を出して、研究費と称して手渡した。
  錫元の功績はたれもがみとめるものであったのだが、軍人事のバランスについてつねづね苦慮していた朴としては、錫元が韓米軍の戦術についてずけずけと批判しながらも戦功をたてたことをこころよからずおもっている――つまりは嫉妬である。この民族のこの手のやっかみほどおぞましいものはない――軍幹部も少なからずいたこともあり、そのため昇進ではなく賞与の支給にとどめたのであろう。

  執務室のキャビネットには、財閥から献金させた数十億ウォンもおよぶ現金が常備されていた。すべて政権維持用の政治資金であり私財ではない。
  朴には、公(おおやけ)を私(わたくし)して不正に蓄財する悪癖はいっさいなかった。
  さらにいえば、かれは一族親戚を高位につけ利権をあてがうことをかたく禁じていた。この点だけをみても朝鮮人ばなれしていたといっていい。
「今晩はこれから宴会をする。君にも参加してもらいたい」
  錫元にことわる理由はない。そのまま朴と安全家屋(セーフティハウス)に移動した。

  朴正煕は酒をこのんだ。
  とはいえ、贅沢をきらい濁り酒(マッコルリ)を飲み、肴は味噌をつけた生の青唐辛子だけであった。また、質素な手打ちうどん(カルククス)をこのみ、青瓦台での食事会にはかならずそれを出した。この点、台所の隅にあった味噌を肴にして一族の若者とさしで酒を飲んだ執権北条時頼に似てはいる。
  この日もそうであった。肴は生の青唐辛子とキムチだけである。参加者は、朴夫妻と錫元のほかに、軍要職にある全斗煥、盧泰愚らがいた。
「君のことは全君からよくきいていた。現場指揮官というより教官か研究者に向いていると」
  朴はそういってわらった。全斗煥が言葉をついだ。
「陸士時代に校庭で、太平洋戦争と朝鮮戦争について私に語ってくれただろ」
  全は、その内容についてもよくおぼえていた。
「金君、日清戦争と朝鮮戦争について教えてほしい」
  朴はそういって青唐辛子をかじった。
「とくに、平壌攻略についてだ」
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