朝鮮を笑う

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斜め上の雲 46

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/06/21 09:00 投稿番号: [1585 / 2847]
  李承晩は、調査委員会の中間報告をもって調査を打ち切り、事態の収集をはかろうとした。
  申国防部長官は趙炳玉内務部長官、金俊淵法務部長官とともに四月二十四日に解任されている。さらには、軍幹部の人事異動をおこない申長官につらなる人脈をほぼ排除した。
  李承晩は開戦以来評判のよくなかった申と野党出身の二人の長官を解職することで、不評の一掃と政治力の強化をねらったのである。事件を政治的に利用したといっていい。

  政治的に利用したというなら金司令官ら防衛隊幹部の処断もそうであろう。
  十一人の被告は七月五日からはじまった軍法会議にかけられた。前回の軍法会議は国防警備法に基づくものであり、今回は非常措置法に基づくため、一事不再理は適用されないというりくつである。
  その措置法では、軍需物資の不正処分した者の最高刑は死刑と定められている。また、太完善議員は、国民防衛隊疑獄事件調査処理委員会を結成したことを李承晩に報告したとき、
「防衛隊幹部の非行はよく知っている。何人かはかならず死刑にする」
  といわれたという。結論は最初から決まっていたといえる。
  大邱の東仁国民学校の講堂でひらかれた軍法会議は、きわめて異例なことに公開され、傍聴におしかけた市民たちで講堂どころか運動場、道路にまで人があふれたため、校庭にスピーカーが設置された。
  つまりは、国民たちの不信感と不満をそらすための公開劇であった。

  七月十八日、金潤根ら五人に死刑、一人に懲役十五年の判決がくだり、残りの六人は公訴棄却となった。
  この日、特別傍聴席には申の後任である李起鵬国防部長官のほか、憲兵司令官崔慶禄准将、戦時特命検閲官に任命されていた金錫源准将もいた。
「金潤根はそう悪い人間ではなかったのだが。軍歴どころか兵卒の経験すらなかった。おもわぬ高位を得ておかしくなってしまったのかもしれない」
  金錫源は、事件の研究のためおとずれた錫元に対してそういった。取り調べのさい金潤根は従順であったばかりか、涙を流しながら、
「国民が窮乏に耐えているのに、じぶんの飲食欲に負けた。もうしわけない」
  といったという。

  副司令官であった尹益憲大佐も金司令官とおなじく六尺の豊かな巨体を持つ人物であったが、取り調べ中もつねに泰然としていた。
「ありゃぁ、悪人だな」
  錫元の訪問をうけた崔慶禄はそういった。取り調べ中、尹は検察官にむかって、
「こんなことになると知っていれば、貴官にもすこし握らせておくのでしたな」
  平然としてそういったという。
「不気味なほどに堂々としていた。まるで支那の大官かなにかのようだったよ」
  たしかに、尹は支那での生活が長かった。
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