朝鮮を笑う

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斜め上の雲 18

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/03/28 21:33 投稿番号: [1323 / 2847]
  第3師団は撤退の準備にとりかかった。
  米海軍の上陸用舟艇が4隻派遣され収容されることになっている。駆逐艦も援護にくるという。
「かんたんには撤退できまい。追撃を断念させ、反攻への地ならしをする」
  金錫源はそういって策をねった。うちあわせのため崔参謀長が米海軍との間を往復した。

  8月15日深夜、金錫源は火力を敵右翼に集中し、1時間砲撃をおこなったあと、にわかに進撃を命じた。
  守勢一方だった韓国軍の進撃に虚をつかれた北朝鮮軍はわずかにしりぞき戦線に間隙ができた。それを埋めるため中央・左翼はあわててしりぞいた。
「追撃はせぬ。すみやかに全軍退却」
  金錫源は冷静に撤退を命じ、第3師団は当初の防御線から南へ後退し、浦項のまちを放棄した。
「一気に退却しないのですか」
  錫元は首をかしげた。せっかく敵との距離をあけることができたのにもったいないではないか。
「元、それは危険すぎる。やつらは戦線整理のため一時的にしりぞいただけであり、いま後ろをみせれば、待ってましたとばかりにつけこんでくる。それと」
  金錫源は錫元を元とよぶ。
「もうすこしえさを食わせてやる必要がある」
  そういって南東への退却を命じた。

  浦項を攻めたてる北朝鮮軍にしてみれば、おもわぬ攻勢をくらって戦線整理のため一時的にしりぞいただけであり、とくに痛痒はかんじなかった。
  むしろ、その攻勢は退却まえの擬態であるとふんだ。
「海上へ逃げる気か。そうだとすれば深追いはできぬ」
と司令官はいい、参謀のほうに顔を向けた。当然の懸念である。海上へ逃げるなら輸送船に援護艦艇も同行しているはずであり、その艦砲射撃の餌食になる。
「しかし、海岸方向ではなく南東の山地にむかって退却しております」
  参謀は即答した。退却速度は遅く、しかも、めだって兵数が減っているという。
「陸路を南下し、あたらしい抵抗戦線を構築する可能性はないのですか」
  口をはさんだのは政治将校である。
  南にゆけば新羅の古都慶州がある。ここも釜山防衛の要地であり、ふみとどまるべき場所であろう。
「その可能性もあります。海上への撤退をにおわせておいて、われわれの追撃を遅らせようということもありえます」
  参謀はとくにさからわない。たしかにそれも考えられる。
兵の逃亡がはじまっているのならまともな退却はむずかしい。なんらかの詐術であるという可能性も捨てきれない。
「慎重にやるべきだな」
  司令官はそう判断をくだして、韓国軍に呼応するようにわずかに前進を命じた。
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