朝鮮を笑う

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斜め上の雲 15

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2006/03/11 01:25 投稿番号: [1275 / 2847]
  釜山は包囲されつつある。
  北朝鮮軍は投網を打つように三方から包囲網をちぢめてきた。
  釜山を中心にして円をかくと、東から反時計回りに、浦項、新寧、多富洞、倭館、玄風、馬山とほぼ洛東江にそった線ができる。韓米軍はその円周上に防御線をひいて、司令部を大邱におき、予備兵力を敵の攻撃が集中してきた地点にそのつど派遣する機動防御に徹している。いわゆる「釜山橋頭堡」である。
  米軍を主力とする国連軍はすこしずつ増援されてきた。だが兵力の逐次投入という愚をさけるためそれらを釜山にとどめ、戦略的に時間をかせぎつつ大兵力がたまるのを待つしかない。
  国連軍の総司令官はダグラス・マッカーサー元帥である。
「日本軍を破った男が日本軍を指揮するのか」
  その名を聞いたとき、金錫源は哄笑した。
「よろしい。日本軍が味方にまわればどれほどたのもしいか、存分にみせつけてやろう」
  そして韓国人のど根性もだ、そういって軍刀の柄をたたいた金錫源の顔には、軍人というより野武士のような不敵な笑みがうかんでいた。

  日本軍といえば、金錫源が右腕とたのむ参謀長崔慶禄大佐も日本軍出身である。
  本来は志願兵であり、陸軍士官学校に合格したときに所属部隊のニューギニア出征が決まった。
「陸士にいってしまえば、戦場に出る機会を逸するかもしれない」
  といって、入学を辞退してそのまま出征し、ニューギニア戦線で3度にわたって斬りこみ隊を率いて突撃して、ついに重傷をおって後送された猛将であった。
  金錫源は、首都師団長就任にあたってかれを参謀長に要望した。金にあこがれて陸士をめざしたというかれは、指名されてその配下にくわわることができたのを望外のよろこびとしていた。

  いま、金錫源は首都師団ではなく、再編された第3師団を率いて東部戦線の浦項で抗戦をつづけていた。
  浦項は釜山の北にあり日本海に面した要地である。釜山を包囲する場合、ここをおさえておかないと背後をおびやかされる。盈徳を陥とした北朝鮮軍はさらに浦項攻略にとりかかった。
  韓国軍にとっては浦項を陥とされれば、洛東江の防御線の裏側へまわられてしまうどころか、いっきに釜山をつかれることになる。釜山を守るためにも浦項をうしなうわけにはいかなかった。
  円形陣による機動防御については先にふれた。だが浦項は東海岸にあり、援軍を派遣するには遠い。第3師団と西で連携する首都師団のみが戦力であると考えざるをえない。
  金錫源は課せられた戦略的目標にたいして期待以上にこたえた。銃弾が飛びかうなかで、日本刀をかざして陣頭に立ち、敵軍を睥睨するすがたは兵の士気を高めた。
(これがほんとうの軍人だ)
  つきしたがう錫元は身ぶるいした。小さいころ金村の故老から聞いた立見尚文中将、黒木為腊大将らの雄姿をおもいおこした。
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