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朝まで⑬

投稿者: trip_in_the_night 投稿日時: 2005/12/03 22:19 投稿番号: [3168 / 7270]
橋爪大三郎

「戦争責任」と東京裁判

  今回の番組では、「戦争責任」について触れることができなかった。この問題について、補足説明したい。
  もともと「戦争責任」という言葉は、確立したいい方ではない。戦争を始めたり、終えたりするのは、国家の行為であり、近代国家であれば、当然相応の手続きをへてから行なっている。つまり、合法的な行為である。合法的である以上、結果がどうであれ、法律上の責任は生じない。大勢の人民が予想以上に死亡した、などの場合には政治上の責任が生じるが、これは国内での問題である。
  国際法上の問題としては、ルールに基いているかぎり責任は生じない。たとえば民間人を殺さないなどのルールだ。だがこうしたルールを踏みにじって戦闘行為や作戦を命令した、あるいは命令に従って実行した――これらの者たちは「戦争犯罪人」となる。これは国際法の確立した法理である。
  かつてはこれを「戦争責任」といった。
  ところが、第二次世界大戦が終結してみたら、ナチスをこの法理では裁ききれない。
  とくにユダヤ人を数百万人殺害したのは、第二次世界大戦の被害と思われているが、よく考えてみると、これは「戦争の被害」ではない。ナチスが国内の、あるいは占領地のユダヤ人を、戦闘行為としてではなく、虐殺した。このようなことが起こるとはだれも予想していなかった。従来の法理では裁くことができない。
  そこで、この虐殺を「戦争の副産物」と捉えて、「平和に対する罪」「人道に対する罪」を根拠に罰することにした。
  この論理は東京裁判にもそのまま適用された。いまでは、このようなケースも含めて、「戦争責任」といっている。
  東京裁判では、昭和天皇は起訴されることもなく、また証人として呼ばれることもなかった。つまり「免責」である。
  いったん起訴されればその有罪無罪を判断するのは裁判所だが、それ以前に起訴するかどうかを決めるのは検察官の役目である。東京裁判で主席検察官を務めたキーナンは、連合国軍司令官マッカーサーと密に連絡をとって起訴するかどうかを決定した。天皇の戦争責任を問わないことを実質的に決定したのはアメリカだったのである。
  「戦争責任」は、自虐史観や硬直した反動的言論がはびこる現在、もう一度根本から問い直したいテーマである。

(終了)
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