『立ちすくむ』傍観者以外の何者でもなく1
投稿者: jyonnconner 投稿日時: 2006/12/05 03:34 投稿番号: [1245 / 2525]
2002年1月4日
http://www.furutachi-project.co.jp/sakka/got/data/ch027.html
もう何度も見た光景だった。
イスラエル軍との銃撃戦、または一方的な侵攻作戦でパレスチナ人に死者が出る。
死者は「殉教者」と呼ばれ、手厚く葬られる。
病院から自宅へ、自宅からモスクへ、モスクから遺体は多くの民衆とともに墓地に運ばれる。死者の境遇にもよるが、時にその葬儀デモは数百人規模の大行進となる。
死者が特定の組織に属している場合などは、その組織の民兵たちが、手に手に自動小銃を持ち空に向かって撃ち放つ。
12月21日、金曜日。
一昨日まで、ガザにいたのだが、その日の朝、エルサレムのホテルにガザから電話があった。
「昨日、ハマスのリーダーが逮捕されそうになった。銃撃戦があり一人死んだ。今日葬儀がある。何かが起こる」
ガザで頼りにしているガイドからの電話だった。一瞬迷った。
その日は金曜日。金曜日はイスラムの休息日。昼近く、多くの教徒たちがモスクに行く。
モスクでは祈りとともに、地区の指導者の講話がある。
昨年9月末から始まった、第2次インティファーダ(民衆蜂起)。指導者の講話の多くはイスラムの教えに則って、ジハード(聖戦)を鼓舞するものだった。
モスクでの祈りをあげると、人々は大挙して、それぞれの自治区の中にあるユダヤ人入植地やイスラエル軍が管理するチェックポイントに繰り出す。
インティファーダ。投石が起こる。イスラエル軍が発砲する。怒号と硝煙。ゴム弾やガス弾と石つぶての応酬。時として民兵たちの自動小銃が炸裂する。イスラエル軍の機銃がうなる。救急車はひっきりなしにサイレンを鳴らし、闘争現場を走り回る。
負傷者が出る。死者も出る。そこで流れ弾に当たったメディアの姿もあった。
昨年来、何度も見た光景。何度も撮影した現場。
その現場が、今回のパレスチナ行きでは少なかった。
9月のアメリカ同時多発テロ以来、イスラエル軍は、ここぞとばかり、パレスチナ自治区を攻撃した。10月も11月も、そして12月も。
ヨルダン川西岸、ガザ地区、多くの治安施設は完膚なきまで破壊されていた。民家の多くも破壊されていた。
F-16戦闘機による爆撃、アッパチ・ヘリコプターによるミサイル攻撃、戦車や装甲車による住宅街や民家への攻撃、ハマスやイスラム聖戦、PFLP といった、イスラエル政府が「テロ組織」と指定した組織メンバーの摘発を名目に掃討作戦を展開した。それ暗殺命令を含んでいた。
もう、ガス弾やゴム弾ではなかった。軍事的オペレーションだった。叫び声をあげて、石を投げるなどといった抗議行動は無力だった。自治区は再びイスラエルの完全占領地となった。
ガザでは多くの瓦礫の山を見た。それは一瞬にしてビルを破壊し、人体を吹き飛ばす戦争の実体だった。瓦礫の中を空ろな表情で歩いている警官や軍人を見た。
少なくともそれまでの闘争現場には、人間の顔があった。石を投げる少年たちをせせら笑う若きイスラエル兵の顔が見えた。イスラエル兵の慌てふためく姿をからかうパレスチナ少年の無邪気な笑い声もあった。互いにののしりあい、からかいあい、数時間たつと「今日はこれまで、またな、今度は撃ち殺すぞ」というイスラエル兵の声、「明日も来るからな、お前に石をぶつけてやるぞ」というパレスチナ少年の叫び。抵抗現場の人間の日常があった。それがインティファーダだった。
しかし、12月のパレスチナにはそれはなかった。
そこにあるのは、およそ人間を介在しないのではないかと思われる近代兵器の空虚で絶望的な戦果だった。無残な光景が目の前にあった。
少年たちはおとなしかった。大人たちもおとなしかった。じっと耐えているようだった。
各自治区を結ぶ道路の検問はより厳しさを増し、人々の通行や物資の流通は妨害されていた。町の出口には戦車や装甲車が配備され銃口が道行く人々に向けられていた。
人々は無力感とその屈辱の中で、じっと押し黙っているようだった。
パレスチナ自治政府のアラファト議長もイスラエル政府の有無を言わせぬ侵攻にお手上げだった。ハマスや、イスラム聖戦が最後の抵抗とばかりに自爆攻撃を仕掛けていたが、それも限界に来ていた。一人や二人の勇敢な自爆テロリストが、抵抗の意志を証明してはいたものの、イスラエル軍の報復は幼児や老人、女性と見境いがなかった。
アラファトもとうとう、身内のパレスチナ過激派狩りに乗り出していた。パレスチナ人は分断されていた。抵抗を続ける派と、しばし沈黙する派と。そして、どちらでもなくただ平穏な日々がほしいという多くの民衆とに。暗い鬱屈と閉塞感に包まれながら。
沈鬱な空気がパレスチナを覆っていた。
http://www.furutachi-project.co.jp/sakka/got/data/ch027.html
もう何度も見た光景だった。
イスラエル軍との銃撃戦、または一方的な侵攻作戦でパレスチナ人に死者が出る。
死者は「殉教者」と呼ばれ、手厚く葬られる。
病院から自宅へ、自宅からモスクへ、モスクから遺体は多くの民衆とともに墓地に運ばれる。死者の境遇にもよるが、時にその葬儀デモは数百人規模の大行進となる。
死者が特定の組織に属している場合などは、その組織の民兵たちが、手に手に自動小銃を持ち空に向かって撃ち放つ。
12月21日、金曜日。
一昨日まで、ガザにいたのだが、その日の朝、エルサレムのホテルにガザから電話があった。
「昨日、ハマスのリーダーが逮捕されそうになった。銃撃戦があり一人死んだ。今日葬儀がある。何かが起こる」
ガザで頼りにしているガイドからの電話だった。一瞬迷った。
その日は金曜日。金曜日はイスラムの休息日。昼近く、多くの教徒たちがモスクに行く。
モスクでは祈りとともに、地区の指導者の講話がある。
昨年9月末から始まった、第2次インティファーダ(民衆蜂起)。指導者の講話の多くはイスラムの教えに則って、ジハード(聖戦)を鼓舞するものだった。
モスクでの祈りをあげると、人々は大挙して、それぞれの自治区の中にあるユダヤ人入植地やイスラエル軍が管理するチェックポイントに繰り出す。
インティファーダ。投石が起こる。イスラエル軍が発砲する。怒号と硝煙。ゴム弾やガス弾と石つぶての応酬。時として民兵たちの自動小銃が炸裂する。イスラエル軍の機銃がうなる。救急車はひっきりなしにサイレンを鳴らし、闘争現場を走り回る。
負傷者が出る。死者も出る。そこで流れ弾に当たったメディアの姿もあった。
昨年来、何度も見た光景。何度も撮影した現場。
その現場が、今回のパレスチナ行きでは少なかった。
9月のアメリカ同時多発テロ以来、イスラエル軍は、ここぞとばかり、パレスチナ自治区を攻撃した。10月も11月も、そして12月も。
ヨルダン川西岸、ガザ地区、多くの治安施設は完膚なきまで破壊されていた。民家の多くも破壊されていた。
F-16戦闘機による爆撃、アッパチ・ヘリコプターによるミサイル攻撃、戦車や装甲車による住宅街や民家への攻撃、ハマスやイスラム聖戦、PFLP といった、イスラエル政府が「テロ組織」と指定した組織メンバーの摘発を名目に掃討作戦を展開した。それ暗殺命令を含んでいた。
もう、ガス弾やゴム弾ではなかった。軍事的オペレーションだった。叫び声をあげて、石を投げるなどといった抗議行動は無力だった。自治区は再びイスラエルの完全占領地となった。
ガザでは多くの瓦礫の山を見た。それは一瞬にしてビルを破壊し、人体を吹き飛ばす戦争の実体だった。瓦礫の中を空ろな表情で歩いている警官や軍人を見た。
少なくともそれまでの闘争現場には、人間の顔があった。石を投げる少年たちをせせら笑う若きイスラエル兵の顔が見えた。イスラエル兵の慌てふためく姿をからかうパレスチナ少年の無邪気な笑い声もあった。互いにののしりあい、からかいあい、数時間たつと「今日はこれまで、またな、今度は撃ち殺すぞ」というイスラエル兵の声、「明日も来るからな、お前に石をぶつけてやるぞ」というパレスチナ少年の叫び。抵抗現場の人間の日常があった。それがインティファーダだった。
しかし、12月のパレスチナにはそれはなかった。
そこにあるのは、およそ人間を介在しないのではないかと思われる近代兵器の空虚で絶望的な戦果だった。無残な光景が目の前にあった。
少年たちはおとなしかった。大人たちもおとなしかった。じっと耐えているようだった。
各自治区を結ぶ道路の検問はより厳しさを増し、人々の通行や物資の流通は妨害されていた。町の出口には戦車や装甲車が配備され銃口が道行く人々に向けられていた。
人々は無力感とその屈辱の中で、じっと押し黙っているようだった。
パレスチナ自治政府のアラファト議長もイスラエル政府の有無を言わせぬ侵攻にお手上げだった。ハマスや、イスラム聖戦が最後の抵抗とばかりに自爆攻撃を仕掛けていたが、それも限界に来ていた。一人や二人の勇敢な自爆テロリストが、抵抗の意志を証明してはいたものの、イスラエル軍の報復は幼児や老人、女性と見境いがなかった。
アラファトもとうとう、身内のパレスチナ過激派狩りに乗り出していた。パレスチナ人は分断されていた。抵抗を続ける派と、しばし沈黙する派と。そして、どちらでもなくただ平穏な日々がほしいという多くの民衆とに。暗い鬱屈と閉塞感に包まれながら。
沈鬱な空気がパレスチナを覆っていた。
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