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北極圏地域における先住民生存捕鯨

投稿者: crawlingchaos_g 投稿日時: 2005/09/25 23:25 投稿番号: [7657 / 62227]
−アラスカとチュコトカの事例より−

浜口尚:園田学園女子大学短期大学部

1.はじめに
  2002年5月、山口県下関市で開催された第54回国際捕鯨委員会年次会議において米ロ共同提案による「アラスカ、チュコトカの先住民によるホッキョククジラ捕獲割当要求案」が否決された(1)。本要求案は「2003年から2007年までの5年間の陸揚げ数280頭、年間最大鈷打ち数68打撃、未使用鈷打ち分14打撃まで翌年ヘの繰越を認める」(2)という内容で、従来から当該地域の先住民に容認されてきた捕鯨形態とほぼ同じ内容であった。本要求案否決の背後には捕鯨問題を巡る長年の日米対立があったが、ここではその問題には立ち人らない。
  アラスカの先住民によるホッキョククジラ捕鯨は1978年より「先住民生存捕鯨」として国際捕鯨委員会から容認されてきた。従来はアラスカの先住民のみに認められてきたこのホッキョククジラ捕鯨は、1998年以降はアラスカの先住民の捕獲割当の一部をチュコトカの先住民に譲る形で、チュコトカの先住民にも認められるようになり、そのかわりに、従来チュコトカの先住民にしか認められていなかったコククジラの捕獲が、チュコトカの先住民の捕獲割当の一部を譲る形で、米国ワシントン州に居住する先住民マカーにも認められるようになった(cf. FREEMAN et al.1998:82,109,117;小松2001: 95, 97)。
  一方、チュコトカの先住民は従来から先住民生存捕鯨としてコククジラの捕獲が認められてきたが(1998年以降はマカー割当分を含む)、この捕獲に開しては   「2003年から2007年までの5年間、合計620頭、年間最大140頭まで」(3)という捕獲割当が全会一致で合意
された。
  以上が2002年5月、第54回国際捕鯨委員会終了時点の話である。その後、2002年10月に国際捕鯨委員会特別会議が開催され、アラスカ、チュコトカの先住民によるホッキョククジラ捕鯨は「2003年から2007年までの5年間の陸揚げ数280頭、年間最大銛打ち数67打撃、未使用銛打ち分15打撃まで翌年への繰越を認める」(4)という内容で投票に付されることなく合意がなされた。その結果、2003年以降もアラスカ、チュコトカの先住民はホッキョククジラ捕鯨を継続できることとなったのである。最終結果は悪くはなかったが、この5か月間の騒動は何であったのだろうか。高度に政治化した捕鯨問題の一つの帰結であったことは確かである。
  以下、本稿においては、外部の力によって多大な影響を被ってきた(また、現在も被っている)アラスカ、チュコトカの先住民社会におけるホッキョククジラ捕鯨、コククジラ捕鯨のもつ意義を探っていく。本稿が読者諸氏の当該地域における先住民捕鯨の現状理解の手助けとなれば、筆者としては幸甚である。
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