米本昌平「調査捕鯨は即刻中止すべし」(2)
投稿者: r13812 投稿日時: 2009/12/24 15:24 投稿番号: [40199 / 62227]
捕鯨・反捕鯨の勢力バランスは絶妙の関係
例えば、自民党捕鯨議連には農水族の大物議員を中心に約60人が名を連ねているし、民主党の「政策集INDEX2009」には調査捕鯨は正当な権利とするだけではなく、商業捕鯨の復活までが言及されている。
IWC総会における捕鯨・反捕鯨の勢力バランスは長い間、ほとんど不変で、何も決まらない状態が続いているのだが、実はこの状態こそがすべての関係者にとって好都合なのだ。
ある国際政治学者はこの状態を、経済学で言う「パレート最適」にあると喝破した。農水官僚は調査捕鯨という小利権を死守し、シー・シェパードなどの反捕鯨組織には世界中から募金が集まり、日本やオーストラリアの国会議員は、IWC総会やシー・シェパードの妨害があるたびごとに自国のために奮闘している姿がテレビに映し出されるからである。
この構図を念頭に、農水官僚は、愛国的感情を刺激するような情報をその都度流し続けている。
実はダブついている鯨肉在庫
しかも、多くの人が当然と受け取っている「鯨食は日本の伝統文化」という見解は、かつての日本捕鯨協会が1970年代半ばから「国際ピーアール」という会社を使って振りまいた俗説である。
実際、『日本PR年鑑1983年版』にはその報告が収載されている。これによると、海外での諸機関への働きかけには失敗したが、日本の新聞の論説委員に向けた働きかけは効果的であったとし、世論工作の成功例とされている。
最近の研究でも、捕鯨を文化と結びつける新聞記事は79年以降に出現することが確認されている。
岡田克也外務大臣までが定例記者会見で「鯨食は日本の文化」とコメントしたが、現在、鯨肉は売れず、在庫はダブついている。
日本は2007年以降の新しい計画として、南極海で年に850頭のミンククジラのほか、ナガスクジラ、ザトウクジラ各50頭という大幅な捕獲数の増加を計画しているが、船舶火災やシー・シェパードの妨害などで予定数は全く捕獲できていない。
もし計画通り捕獲していれば、在庫はさらに膨らんだはずである。
日本の調査捕鯨は、お世辞にも合理的な科学研究とは言えない代物であり、これを科学だと強弁し続けることによる日本のイメージ低下は計り知れないものがある。
世論をあやつり、省益確保に走る典型例
日本がIWCの場で、調査捕鯨をやめる代わりに沿岸捕鯨を認めてくれるよう提案すれば、長年の対立はたちどころに解消するはずである。
つまりこれは、官僚がいったん手にした省益を確保するためなら、世論をあやつり、国益を損なうことすら厭わない具体例と見なしてよい。
現在、マグロをはじめとする水産資源は、グローバルな次元で管理強化の方向にある。そのような国際討議の場で、日本の科学データに疑問が付されることがないようにするためにも、現行形態の調査捕鯨はただちにやめるべきである。
そのうえで改めて、鯨資源の科学的管理に合致した研究プログラムを立ち上げるべきである。その際は、この問題を水産庁捕鯨班=鯨研というインナーサークルから引き離し、アカデミズムの下で進めるべきである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=2
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=3
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米本 昌平 Shouhei Yonemoto
http://jbpress.ismedia.jp/common/images/v3/common/btn-detail.gif
1972年京都大学理学部(生物科学専攻)卒業、76年三菱化成生命科学研究所社会生命科学研究室入所、89年同研究室長、99年同・科学技術文明研究部長、2002年科学技術文明研究所長、2007年から東京大学先端科学技術研究センター・特任教授。専門は科学史・科学論。主な著書には『バイオエシックス』(講談社現代新書)、『先端医療革命』(中公新書)、『遺伝管理社会』(弘文堂)[1989年度毎日出版文化賞受賞]、『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『クローン羊の衝撃』(岩波ブックレット)、『知政学のすすめ』(中公叢書)[1999年度吉野作造賞受賞]、『現代社会と優生学』(共著、講談社現代新書)、『独学の時代』(NTT出版)、『バイオポリテイクス』(中公新書)[2007年科学ジャーナリスト賞受賞]などがある
例えば、自民党捕鯨議連には農水族の大物議員を中心に約60人が名を連ねているし、民主党の「政策集INDEX2009」には調査捕鯨は正当な権利とするだけではなく、商業捕鯨の復活までが言及されている。
IWC総会における捕鯨・反捕鯨の勢力バランスは長い間、ほとんど不変で、何も決まらない状態が続いているのだが、実はこの状態こそがすべての関係者にとって好都合なのだ。
ある国際政治学者はこの状態を、経済学で言う「パレート最適」にあると喝破した。農水官僚は調査捕鯨という小利権を死守し、シー・シェパードなどの反捕鯨組織には世界中から募金が集まり、日本やオーストラリアの国会議員は、IWC総会やシー・シェパードの妨害があるたびごとに自国のために奮闘している姿がテレビに映し出されるからである。
この構図を念頭に、農水官僚は、愛国的感情を刺激するような情報をその都度流し続けている。
実はダブついている鯨肉在庫
しかも、多くの人が当然と受け取っている「鯨食は日本の伝統文化」という見解は、かつての日本捕鯨協会が1970年代半ばから「国際ピーアール」という会社を使って振りまいた俗説である。
実際、『日本PR年鑑1983年版』にはその報告が収載されている。これによると、海外での諸機関への働きかけには失敗したが、日本の新聞の論説委員に向けた働きかけは効果的であったとし、世論工作の成功例とされている。
最近の研究でも、捕鯨を文化と結びつける新聞記事は79年以降に出現することが確認されている。
岡田克也外務大臣までが定例記者会見で「鯨食は日本の文化」とコメントしたが、現在、鯨肉は売れず、在庫はダブついている。
日本は2007年以降の新しい計画として、南極海で年に850頭のミンククジラのほか、ナガスクジラ、ザトウクジラ各50頭という大幅な捕獲数の増加を計画しているが、船舶火災やシー・シェパードの妨害などで予定数は全く捕獲できていない。
もし計画通り捕獲していれば、在庫はさらに膨らんだはずである。
日本の調査捕鯨は、お世辞にも合理的な科学研究とは言えない代物であり、これを科学だと強弁し続けることによる日本のイメージ低下は計り知れないものがある。
世論をあやつり、省益確保に走る典型例
日本がIWCの場で、調査捕鯨をやめる代わりに沿岸捕鯨を認めてくれるよう提案すれば、長年の対立はたちどころに解消するはずである。
つまりこれは、官僚がいったん手にした省益を確保するためなら、世論をあやつり、国益を損なうことすら厭わない具体例と見なしてよい。
現在、マグロをはじめとする水産資源は、グローバルな次元で管理強化の方向にある。そのような国際討議の場で、日本の科学データに疑問が付されることがないようにするためにも、現行形態の調査捕鯨はただちにやめるべきである。
そのうえで改めて、鯨資源の科学的管理に合致した研究プログラムを立ち上げるべきである。その際は、この問題を水産庁捕鯨班=鯨研というインナーサークルから引き離し、アカデミズムの下で進めるべきである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=2
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2417?page=3
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米本 昌平 Shouhei Yonemoto
http://jbpress.ismedia.jp/common/images/v3/common/btn-detail.gif
1972年京都大学理学部(生物科学専攻)卒業、76年三菱化成生命科学研究所社会生命科学研究室入所、89年同研究室長、99年同・科学技術文明研究部長、2002年科学技術文明研究所長、2007年から東京大学先端科学技術研究センター・特任教授。専門は科学史・科学論。主な著書には『バイオエシックス』(講談社現代新書)、『先端医療革命』(中公新書)、『遺伝管理社会』(弘文堂)[1989年度毎日出版文化賞受賞]、『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『クローン羊の衝撃』(岩波ブックレット)、『知政学のすすめ』(中公叢書)[1999年度吉野作造賞受賞]、『現代社会と優生学』(共著、講談社現代新書)、『独学の時代』(NTT出版)、『バイオポリテイクス』(中公新書)[2007年科学ジャーナリスト賞受賞]などがある
これは メッセージ 40198 (r13812 さん)への返信です.
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