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Re: “2万頭 ホルト 捕鯨” で検索すると

投稿者: aplzsia 投稿日時: 2009/03/03 07:59 投稿番号: [32440 / 62227]
1978年版のIWC年次報告を見てみましたが、この年にシドニー・J・ホルトが
定例科学委員会に提出した論文は一本だけです。

題名は"Some Implications of Maximum Sustainable Net Zield as a
Management Objective for Whaling" 肩書きはFAO/UNEP Marine Mammal Projectとなってます。

内容は最大持続可能収穫量(MSY)の議論でおなじみの放物線変形タイプが
いろいろに扱われている高度に抽象的なもので、南極のクジラが何匹という
具体的な話とは関係ないです。

あまり「捕鯨問題」になじみのない方々に説明しておくと、野生生物の最大持続
可能収穫量説というのは、生物がその環境の許す範囲いっぱいに繁殖している
時にではなく、それを下回るようなある領域で繁殖力が最大になるから、
そこで収穫すると長期的に利得が最大になるという理論です。

主として水産領域でこの理論を数理的に確立したのがほかならぬシドニー・
ホルトと同僚のR.J.H.Bevertonの1957年の論文なのですが。

この理論を更に数学的に精緻化し、クジラのような繁殖の遅い生物で経済的
要因を加えて分析するとどういうことになるかということを1970年頃から
考えていたのが、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の数学者、
コリン・W・クラークです。

この人の体系的な書物、”Mathematical Bioeconomics”という本が1976年に
出版されたので、ホルトは改めて持続可能性とMSYについてマネージメント
理論としての考察を行ったというのがこの論文です。

資源管理論に経済学的要素を強く引き入れているため、英語でいうサイエンス
=自然科学、の枠からははずれる部分が大きいです。

そういうところにつけ込んで「科学的ではない」と言うのはアンフェアでしょうね。

この方向の議論が最近また再燃していて、(国際)保全生物学会の理論誌なんか
でもColin W. Clark の「繁殖率が利子率より低い野生動物は商業的開発に
さらされると枯渇する」理論がよく引用されています。

なぜ再燃したのかというと、長く続いたネオリベラリズムの時代に、
win-winゲームと称して、長期的利益と短期的利益が対立する場合、
両者それぞれの利害を妥協させるような説得を行うのが保全生物学の
役割だという風潮が蔓延したというのですね。

だけど、そもそも短期的利害を含み込んだ長期的利害がすでに理論的に
明確にされている時、さらにもう一度長期が短期に妥協するというのは
変じゃないかという、当然の疑問が出てきたわけです。

ブッシュ政権が終わったので、今まで予算や発言の場で抑圧を受けていた
長期的利益派の人々が、積極的に発言できる雰囲気になってきたという
ことのようです。
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