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タカナリタトオル 朝日新聞コラム

投稿者: tom44 投稿日時: 2002/05/30 01:23 投稿番号: [1707 / 62227]
http://www.asahi.com/column/aic/Mon/drag.html
先住民の生存権か役人の生存権か

下関で行われていた国際捕鯨委員会(IWC)の総会は、アラスカのイヌイット(エスキモー)などに認めてきた「先住民生存捕鯨」のうちで、期限の来るホッキョククジラの捕鯨案を否決した。この結果、アラスカやロシアのチュコツク半島に住む先住民のこれからの捕鯨が違法状態ということになった。
これまで総会の投票にかけられたことはなく、全体の合意のなかで認められてきた先住民捕鯨が投票となったのは、ホッキョククジラの資源が不足する可能性があるとして、日本などが投票を提起したため。投票の結果は、賛成が多数だったが、承認に必要な4分の3の賛成を得られなかった。
ホッキョククジラの資源問題が投票の表向きの理由だが、実際には、沿岸でのミンククジラの捕獲枠を求めた日本提案が米国などの反対で否決されたことへの「お返し」(AP電)だとみられている。「米国は日本の捕鯨には反対するのに、自国の捕鯨を求めるのは、ダブルスタンダート(二重基準)だ」というのが先住民捕鯨案を否定する国々の根底にある論理だろう。
しかし、先住民捕鯨に賛成することと、日本の捕鯨に反対することは、アンフェアという意味での二重基準だろうか。私はアラスカやチュコツクに行ったことがないので、先住民たちの暮らしがこうだと言い張る自信はないが、厳しい気象状況での生活であることは想像できる。クジラの肉がないと生存できないとも思わないが、日常の食生活には欠かせないものだろう。
いまでは珍味として高値で売られ、それを承知で嗜好のひとつとしてクジラ肉を食べている日本人と、生存にかかわる食料としてクジラを食べている先住民を一緒にすることはできないはずだ。
IWC総会は、各国の利害が衝突する場だ。さまざまないきさつや流れのなかで、この先住民捕鯨の投票が出てきたわけだろうから、これだけをとりあげて一方的に日本政府がおかしいと非難するつもりはない。しかし、先住民捕鯨という人道的な論拠によるものまで日本政府が交渉の道具に使ったのは、日本が捕鯨で引き起こしている悪いイメージを増幅させただけだと思う。
「先住民枠も、例年通りの数量ならともかく、増枠まで求めるからだ」「先住民といっても、トヨタの4駆に乗って、ビフテキを食べている」「密輸といううわさもある」……。こんな反論が予想されるし、そのなかには事実もあるだろう。
しかし、だからといって、先住民の捕鯨枠をとりあげることは正当化されない。日本のアイヌの人たちに捕鯨文化があるのかどうか知らないが、仮に日本のアイヌの人たちに認められていた捕鯨枠を米国政府が取り上げようとしたら、日本の商業捕鯨に対する禁止がもたらした怒りとは比べものにならない怒りを国民のなかに呼び起こすのではないか。
交渉にあたった水産庁の役人は米国の鼻をあかしたと思っているのだろうが、先住民という「禁じ手」を使ったことは、これからの日米関係にも影響を及ぼすと危惧する。また、捕鯨問題でも、イヌイットの人たちは生活のために捕鯨を続けると言っているので、IWCの決定に反する行動が日常化することになる。IWCの権威がさらに傷つくのは確実だ。
日本の捕鯨はもはや産業というようなものはなく、水産庁による「調査捕鯨」が続けられているだけだ。私から見れば、役人の生存権(意地)のために、先住民の生存権を犠牲にしようとしている、としか見えない。
かつて、日本の駐米大使のひとりが「日本の調査捕鯨の正当性をいくらでも語れるが、小さな子どもからクジラの絵とともに、『かわいいクジラを殺さないで』というメッセージをもらうがこたえる。米国の子どもたちが抱いているこのイメージはどうやっても消すことができない」と語っていた。
捕鯨は日本の文化と伝統であり、それを堂々と主張することがなぜ悪いのか、という意見をよく聞く。しかし、その行動が起こしている摩擦のマイナスも考えるべきだと思う。捕鯨は、日本が国際社会のなかで、勝てないけんかをするに値するものとはどうしても思えないのだ。
日本の近代捕鯨を率いてきたのは大洋漁業(現マルハ)だ。その日本語のホームページで会社の沿革をみると、1936年に南氷洋に初出漁したなど、捕鯨が主力だった歴史がわかる。しかし、英語版の沿革を見ると、「捕鯨」の文字はない。国際的なビジネスを進める現在のマルハにとって、「捕鯨」の歴史はことさらに強調したくないことなのだと思う。
日本政府も、マルハのようなスマートさを身につける時期ではないか。

高成田   享   タカナリタ・トオル
経済部記者、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを経て、論説委員。
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