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長門の捕鯨遺産<中国新聞社説5月27日

投稿者: tom44 投稿日時: 2002/05/28 22:46 投稿番号: [1705 / 62227]
長門の捕鯨遺産   IWCが活用に弾み
'02/5/27
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh02052701.html

  地道に続けてきた活動がにわかにスポットライトを浴びた。長門市の青海島東端、通地区を中心に広がる捕鯨の史跡を保存し、民俗芸能を継承してきた住民たちは「急に忙しくなった」と戸惑いながらも「天の恵み」と喜びを隠さない。今月二十四日まで一カ月間、近代捕鯨の基地だった下関市で開かれた国際捕鯨委員会(IWC)の年次会議を契機に、長門市の伝統捕鯨に内外の注目が集まったからだ。

  商業捕鯨の再開で関連産業の振興を図る思惑とは別に、捕獲したクジラの法要や民謡「鯨唄」など捕鯨遺産の存在を広く知ってもらいたい、と関係者は願ってきた。その思いが商業捕鯨再開の是非をめぐる論争を超えて、多くの人の共感を呼んでいる。

  特に、長門市が十一日、IWC会議の海外からの参加者を招いた法要や史跡の見学会は「日本人とクジラの結びつきがこれほどまでとは」と強い印象を与えた。江戸時代に地域を潤した捕鯨の歴史が、クジラを弔った「鯨墓」や位牌、くじら資料館の捕鯨用具や文書、網元の家屋などに刻まれているからだけではない。明治末期に伝統捕鯨が消滅して百年近くになる今もなお、毎年法要が続けられ、地元の通地区で小、中学生にも鯨唄が引き継がれている。参加者らはこうした活動にこそ、伝統文化の素晴らしさを見いだしたのではないか。

  IWC会議に先立って三月に長門市で開かれた第一回日本伝統捕鯨地域サミットでは、知名度の高い和歌山県太地町や高知県室戸市をはじめ全国の伝統捕鯨基地の関係者が集まり、意見交換ができた。通地区の通鯨唄保存会(新宅哲男会長、十六人)の会員は「一つの産業文化を共有する地域同士で、今後も連携を強めたい」と意気込む。伝統の内実をより豊かにするネットワークづくりを望みたい。

  捕鯨遺産の活用を進める動きは、反捕鯨の環境保護団体などとは対立する一面もある。定置網に掛かる一部のクジラ種の捕獲、鯨肉販売を認めた昨年の農水省令改正を機に、水産業者や旅館業者らが二月に設立した「長門大津くじら食文化を継承する会」(河野良輔会長、二百三十五会員)にも捕鯨の復活を期待する声が強い。ただ、戦後の食糧難を体験した世代の郷愁を誘うだけでは「食文化」の名に値すまい。

  河野会長らも「新しいクジラ料理を開発する」としながらも、長門市出身者による近代捕鯨発祥の詳細な研究やくじら資料館の展示品拡充などに活動の重点を置いている。その方がより幅広い賛同が得られよう。

  自然と人間のつながり、命の尊さをうたった作品で人気を集める詩人、金子みすゞも長門市が生んだ貴重な人材だ。彼女に「鯨捕り」「鯨法会」の作品がある。捕鯨文化の奥行き、広がりを一層大切にしてほしい。
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