岩見隆夫 高木のぶ子「拉致論」2
投稿者: nigakudo72 投稿日時: 2002/12/19 08:20 投稿番号: [32877 / 232612]
高樹さんは被害者という「個」の内面への思い入れに傾斜するあまり、凶悪犯罪への怒り、憎しみが薄いのではないか。
次に、一時帰国をめぐる外交交渉の問題である。 〈北朝鮮から「約束を破った」と言われる一連のやり方には納得がいかない。先に犯罪を犯したのは北朝鮮である。だから日本政府も約束を破っていいのか。それで解決できるのか〉
と高樹さんはおっしゃる。 〈日本政府の「帰さない」宣言は、悪ガキがアメ玉欲しさに差し出した握手の手を、上手に利用することなく捩じ上げた。相手を変えるには、まずその手を握り返すことから始めるべきだったのに〉
とも。
確かに、約束は日朝交渉の立役者である田中均外務省アジア大洋州局長と北朝鮮側との秘密交渉の場で交わされた。しかし、交渉相手がだれかを私たち(多分、川口順子外相らも)は知らない。それはともかく、約束どおり五人を戻して、再び帰国させる保証はあるのか。
押し付けではなく
「自由」への「救出」
手を握り返して相手を変える、と言うが、この相手はいかなる相手なのか。高樹さんが言う〈アメ玉〉とは何か。外務省の高官は私にこう言った。 「五人を再帰国させないとなると、拉致を二度繰り返すことになるから、この国際監視のもとでそれはできないと思いますがね。しかし、北朝鮮が考えていることはただ一点、米国の脅威から体制を護持することです。拉致を認めてまで、日本を交渉の場に引き出した狙いもそこにある。逆に言えば、体制護持のためには何でもやる」
平和ボケの日本とは違い、金正日体制の存亡をかけた、必死の形相の悪ガキなのである。米朝関係がこじれれば、戻った五人は人質にされるか、どこかにかき消されるか、わかったものではない。
国家がキバをむいたときは、約束なんか何の意味もなさないことを歴史がふんだんに証明している。北朝鮮はいつでも猫を噛む窮鼠になりかねないことをしっかり頭に刻みながら進めなければならない難交渉である。
だからこそ約束を守り、相手との信頼関係を、と高樹さんは言いたいのかもしれないが、それはお人よしにすぎる。拉致を平然と繰り返した国が次に何をやるか、想像を超える。まず〈五人救出〉を確実にすべきだ。
さて、 〈故郷から切り離されて、生涯ヒリヒリと痛み続ける……〉
という記述だが、高樹さんがもっとも主張したかった点と思われる。私は作家ではないから、人間の心情を見通す能力が乏しいが、少なくとも北朝鮮が〈故郷〉の名に値するとは到底考えられない。 〈「個」を描く私は、我々が幸福と思う状態を彼らに押し付けて、安堵する気にはなれない〉
とも高樹さんは言う。微妙な外交交渉のさなかに、議論を混線させるのは有害である。
押し付けではなく、救出であることだけははっきりさせておかなくてはならない。高樹さんが言うとおり、五人とその家族がどこでどのように生きるかを選ぶのは、ご本人たちである。
万が一、今後も北朝鮮で暮らしたいという家族がいるかもしれない。しかし、その選択は〈自由な日本〉でゆっくり決めてほしいし、それを保証するのが国の責任だろう。押し付けであるはずがない。高樹さんは、 〈外から見た日本はまことに情緒的で傲慢……〉
と論文を締めくくっているが、私には高樹さんのほうが情緒的に映る。拉致の被害国がどうして傲慢なのだろう。
これは メッセージ 1 (mitokoumon_2002 さん)への返信です.