小泉首相の訪朝と課題について☆☆☆☆☆

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9月17日を忘れる勿れ⑤

投稿者: komash0427 投稿日時: 2006/12/28 22:31 投稿番号: [230020 / 232612]
  ‘02(平14)年8月30日。「小泉訪朝・日朝初のトップ会談」が発表されたときも、不安のほうが大きかった森内閣以来の、拉致問題を棚上げしたまま国交正常化を推し進めてしまおうという、大きな流れを感じていたからだ。

  しかし、同じニュースを、九州の姉・フミ子はテレビに拍手を送りながら見ていた。「わあ、よかったあと思いました。本当にパッと周囲が明るくなった感じ」。

  フミ子がそう思ったのには理由があった。直前の28日、フミ子は家族でただ一人、鹿児島市内の病院で、父の正一が肺がんに冒されており、余命半年だということを宣告されていた。高齢の母には内緒にした。東京にいる照明には何と伝えたらいいのだろう。いえないまま1日、2日と時を過ごしていたときに、小泉訪朝のニュースに接したのだ。「父ちゃん、小泉さんが行けば、るみ子は帰ってくるよ。だから、今度の入院も頑張ってね」。そういうと、父も非常に明るい顔を見せた。父に対しては、「栄養状態が悪いし、肺炎も起こしかけているからしばらく入院する」という話しにしてあった。もともと肺気腫と間質性肺炎という持病を持っていたし、春に軽い脳梗塞を起こして以来、ずっと体調を崩していた。年々、体は弱る一方だった。

  9月17日の小泉訪朝――その日近づくにつれ、フミ子はどんどん不安になっていった。最初は期待感が6、7割あったが、訪朝直前の時期には逆に不安が9割以上に増していた。どうしようもなく不安が膨らんできた。もしここで北朝鮮に拉致を否定されたり行方不明だといわれたら、もう妹は永遠に葬り去られてしまうだろう。

  「私と同じ不安が父ちゃんにもあって、それが病気に蝕まれた体に、ものすごいプレッシャーを与えたのだと思います。訪朝が1週間前に迫ったとき、心筋梗塞を起こして、チューブにつながれた絶対安静の状態になってしまった」(フミ子)のである。

  元気がなくなり、食欲もさらに落ちた父を、フミ子は励まし続けた。
  「父ちゃん、食べんと。るみ子が帰ってきたとき、どうすんのっ。照ちゃんも何のために動いていると思うの?父ちゃんたちに、るみ子を会わせたいがために頑張ってるのよ」。いよいよ、小泉訪朝の日が来た。家族会の、「訪朝前日に我々にあって思いを聞いてほしい」という要請は、「心乱さず9月17日を迎えたい」(福田康夫官房長官)という理由で、却下されていた。家族会と会うと心が乱れるというのか。小泉首相が出発する早朝の羽田空港に押しかけていることも考えたが、日本国内が二分されているという印象を北朝鮮側に与えたくないという配慮から、それも諦めた。

  外務省飯倉公館で、最初に横田さんの一家が2階の別室に呼ばれた。続いて有本夫妻。まもなく横田一家がみんなの待つ1階に戻ってきた。が、無言のまま沈痛な面持ちで座っている。誰も声をかけられない。どうでした?なんて、とても聞けない。有本夫妻が戻ってくる前に、フミ子と照明が呼ばれた。

  部屋に入ると、福田官房長官が、「お座りください」といってから、自分は立ったまま「るみ子さんはなくなっています」と告げた。照明の頭の中は真っ白になった。姉のフミ子も言葉を失っている。そのまま何分も経過したような気がするが、数秒に過ぎなかったのかもしれない。フミ子がようやく口を開いた。「いつですか?」「どこで、ですか?」。答えは、「わかりません」だった。照明も「どうして死んだんですか?」と聞いたが、それもわからないという。これはいったい何なんだと思ったが、死亡と宣告されたショックが大きくて、それ以上は質問することができなかった。最後にフミ子が「めぐみちゃんは?」と聞いた。
  「亡くなっています」――。何もかも真っ暗に感じられた。

  この情報は鹿児島にも流れる。でも、オヤジとオフクロに、どんな風に報告すればいいのか。言葉が見つからない。1階のホールに戻った照明は鹿児島にいる長男・信一と電話で相談して、とにかく明日の飛行機で両親のもとに行き直接話すことにした。東京に残って仕事をする気力も失われていた。その場から会社の上司に休暇願いの電話を入れた。

  その頃、鹿児島の病院では、刻々と情報を伝えるテレビに両親が見入っていた。「増元るみ子さん   死亡」――その瞬間、母の信子が泣き崩れると、ベッドの上の正一が大きな声で叱った。

  「るみ子は死んどらん!生きとるッ。北朝鮮のいうことはウソばっかりじゃ」。

  信子が久々に聞く、夫の大声だった。体調を崩した春以来、こんな怒声は聞いたことがなかった。
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