「首領国家」(1/2)
投稿者: komash0427 投稿日時: 2006/08/05 07:10 投稿番号: [228947 / 232612]
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/index.html
日本政府は国連安全保障理事会による北朝鮮非難決議に続き、安倍晋三官房長官を中心にブッシュ政権から提供を受けて制裁対象リストを調べ、金融制裁に踏み切る検討を進めているが、日米が突出して制裁を強化していったい何を達成しようとするのか、見えてこない。
まず、北朝鮮とはどんな性格の国家だろうか。その理解なくして戦略なぞ立てようがない。脱北した元北朝鮮の金正日側近などの証言や韓国の専門家の見解を総合すると、以下のようになる。
中央政府・軍・党が経済の三本柱
北朝鮮とは近代世界史でも類をみない「首領国家」である。時折、ニュースで引用される北朝鮮国営テレビをみればよい。聞き慣れると滑稽とも感じなくなったが、北のアナウンサーは「首領様」と連呼して金正日の「偉業」を讃える。朝鮮労働党総書記・国防委員長である首領金正日と特権階層が父親の金日成の敷いた路線を継承、強化し、軍需と民生の経済を私物化して銀行・商社・企業の複合体による「首領経済」体制を築き上げた。首領経済には実に北朝鮮の国家資金の50―70%が配分されているという。
北朝鮮の経済は中央政府(内閣)が主導する第一経済、軍事・軍需の第二経済、さらに朝鮮労働党に直属する党経済で構成される。この第二経済と党経済の上に君臨するのが「首領様」金正日であり、北朝鮮経済は国家経済と首領経済の二重構造にある。党中央財政経理部には「38号室」、「39号室」、「89号室」と符牒の付いた経済統括部門がある。金正日直轄の銀行「大聖銀行」、商社「大聖貿易」金融機関や企業は39号室所属というふうに、金融、工場・農場・牧場、商社が金正日の私営複合体を形成している。
名古屋大学大学院経済学研究科博士課程鄭 光敏氏の論文「北朝鮮の政治経済システムと食糧エンタイトルメント」(比較経済体制学会年報 vol.42, No.1, Jan. 2005 に掲載)によれば、これらの収益は首領体制の宣伝工作、対南工作の秘密資金、さらに金正日を頂点とする特権階層の外国製奢侈品の購入に充当される。特権層向け配給品は等級分けされ、最高幹部向けは「8号品」「9号品」、金正日とその一族向け外国製は「精盛品」とか「100号品」と呼ばれ、金正日の護衛総局直属の「アミサン代表部」が海外で買い集めては平壌に空輸する。
第二経済と呼ばれる軍事・軍需部門は党軍需工業部第二経済委員会系と人民武力省直系に分かれる。いずれも銀行や商社、工場、農牧場群がぶらさがり、国家経済を構成する地方企業の有望部門を強制的に接収してしまう。脱北者などの証言によれば、ウニ、アサリなど水産物などの輸出は地方の業者が受け持ってきたが、最近では外貨稼ぎで目の色を変えている首領様御用達の企業が地方の権益を取り上げている。
幻想に過ぎない「中国型の改革開放路線で軟着陸」
そんな首領経済体制の北朝鮮が中国に習った改革開放路線を採用して、軟着陸を図るというのは幻想である。金正日労働党総書記・国防委員長がこの1月、発展著しい華南を視察したあと、大方の予想を裏切って、改革開放路線に踏み出すどころか、半年後にはミサイル連射事件が示すようにますます軍事優先、中国には耳をかさなくなってしまった。
その原因は何か。さまざまな憶測が流れているが、筆者は北朝鮮が中国式の改革開放路線に転じれば、北朝鮮の金正日首領経済体制が崩壊してしまう、との危機感があるとみる。改革開放路線は中央に集中していた経済権限を地方に丸投げする「放権譲利」が基本である。
北京の党中央は土地の使用権を地方にまかせ、地方の党幹部が国有銀行から資金を引き出し、開発を競う。党中央の最高幹部である政治局中央委員会はいくつかの派閥に分かれているが、上海、広東閥が代表例である。閥の代表が常務委員となり、自身の配下を地方の党書記ら幹部に配置し、これらの地方幹部が身内や縁戚を使って不動産開発に励む。5年に1度の党大会では経済実権を握る中央と地方の党幹部の人事が決まるが、前年のことしは各地方が経済成長率という「成果」を誇示するために、ますます開発、投資に励む。胡錦濤総書記・国家主席、温家宝首相ら政府官僚がいくら過熱にブレーキをかけようとしてもだれも耳を貸さない。
奇怪な様相の「首領経済」は経済特権を分散させる「放権譲利」とは相いれない。つまり中国式改革開放路線は首領経済体制の崩壊につながる。首領経済しか知らない金正日総書記の目から見れば、中国の体制こそは持続不可能に映る。だから、中国に体制保証してもらう意味はたいしてない。中国を相手にせず、唯一の超大国米国
日本政府は国連安全保障理事会による北朝鮮非難決議に続き、安倍晋三官房長官を中心にブッシュ政権から提供を受けて制裁対象リストを調べ、金融制裁に踏み切る検討を進めているが、日米が突出して制裁を強化していったい何を達成しようとするのか、見えてこない。
まず、北朝鮮とはどんな性格の国家だろうか。その理解なくして戦略なぞ立てようがない。脱北した元北朝鮮の金正日側近などの証言や韓国の専門家の見解を総合すると、以下のようになる。
中央政府・軍・党が経済の三本柱
北朝鮮とは近代世界史でも類をみない「首領国家」である。時折、ニュースで引用される北朝鮮国営テレビをみればよい。聞き慣れると滑稽とも感じなくなったが、北のアナウンサーは「首領様」と連呼して金正日の「偉業」を讃える。朝鮮労働党総書記・国防委員長である首領金正日と特権階層が父親の金日成の敷いた路線を継承、強化し、軍需と民生の経済を私物化して銀行・商社・企業の複合体による「首領経済」体制を築き上げた。首領経済には実に北朝鮮の国家資金の50―70%が配分されているという。
北朝鮮の経済は中央政府(内閣)が主導する第一経済、軍事・軍需の第二経済、さらに朝鮮労働党に直属する党経済で構成される。この第二経済と党経済の上に君臨するのが「首領様」金正日であり、北朝鮮経済は国家経済と首領経済の二重構造にある。党中央財政経理部には「38号室」、「39号室」、「89号室」と符牒の付いた経済統括部門がある。金正日直轄の銀行「大聖銀行」、商社「大聖貿易」金融機関や企業は39号室所属というふうに、金融、工場・農場・牧場、商社が金正日の私営複合体を形成している。
名古屋大学大学院経済学研究科博士課程鄭 光敏氏の論文「北朝鮮の政治経済システムと食糧エンタイトルメント」(比較経済体制学会年報 vol.42, No.1, Jan. 2005 に掲載)によれば、これらの収益は首領体制の宣伝工作、対南工作の秘密資金、さらに金正日を頂点とする特権階層の外国製奢侈品の購入に充当される。特権層向け配給品は等級分けされ、最高幹部向けは「8号品」「9号品」、金正日とその一族向け外国製は「精盛品」とか「100号品」と呼ばれ、金正日の護衛総局直属の「アミサン代表部」が海外で買い集めては平壌に空輸する。
第二経済と呼ばれる軍事・軍需部門は党軍需工業部第二経済委員会系と人民武力省直系に分かれる。いずれも銀行や商社、工場、農牧場群がぶらさがり、国家経済を構成する地方企業の有望部門を強制的に接収してしまう。脱北者などの証言によれば、ウニ、アサリなど水産物などの輸出は地方の業者が受け持ってきたが、最近では外貨稼ぎで目の色を変えている首領様御用達の企業が地方の権益を取り上げている。
幻想に過ぎない「中国型の改革開放路線で軟着陸」
そんな首領経済体制の北朝鮮が中国に習った改革開放路線を採用して、軟着陸を図るというのは幻想である。金正日労働党総書記・国防委員長がこの1月、発展著しい華南を視察したあと、大方の予想を裏切って、改革開放路線に踏み出すどころか、半年後にはミサイル連射事件が示すようにますます軍事優先、中国には耳をかさなくなってしまった。
その原因は何か。さまざまな憶測が流れているが、筆者は北朝鮮が中国式の改革開放路線に転じれば、北朝鮮の金正日首領経済体制が崩壊してしまう、との危機感があるとみる。改革開放路線は中央に集中していた経済権限を地方に丸投げする「放権譲利」が基本である。
北京の党中央は土地の使用権を地方にまかせ、地方の党幹部が国有銀行から資金を引き出し、開発を競う。党中央の最高幹部である政治局中央委員会はいくつかの派閥に分かれているが、上海、広東閥が代表例である。閥の代表が常務委員となり、自身の配下を地方の党書記ら幹部に配置し、これらの地方幹部が身内や縁戚を使って不動産開発に励む。5年に1度の党大会では経済実権を握る中央と地方の党幹部の人事が決まるが、前年のことしは各地方が経済成長率という「成果」を誇示するために、ますます開発、投資に励む。胡錦濤総書記・国家主席、温家宝首相ら政府官僚がいくら過熱にブレーキをかけようとしてもだれも耳を貸さない。
奇怪な様相の「首領経済」は経済特権を分散させる「放権譲利」とは相いれない。つまり中国式改革開放路線は首領経済体制の崩壊につながる。首領経済しか知らない金正日総書記の目から見れば、中国の体制こそは持続不可能に映る。だから、中国に体制保証してもらう意味はたいしてない。中国を相手にせず、唯一の超大国米国