北朝鮮を巡る米中の合従連衡―Ⅰ
投稿者: komash0427 投稿日時: 2005/09/30 23:09 投稿番号: [218385 / 232612]
米国と中国は北朝鮮を巡ってどのような関係を作っているかを捉えるために「海外事情研究所6月号」に掲載された論文をご紹介します。
すでに第4回6カ国協議は共同声明を採択して閉幕しているので、この論文が書かれた当時と現在の情勢は異なりますが、北朝鮮を巡る米中の思惑という点については独自の視点で描かれています。今後の米中関係を観察するうえで一つのヒントになるのではないでしょうか。
特集=朝鮮半島への新たな視点から
「北朝鮮を巡る米中の合従連衡」
青木直人(ジャーナリスト)
はじめに
朝鮮問題は国際関係問題でもある。
朝鮮半島情勢を歴史的に振り返れば、近代に入ってからも日清戦争、日露戦争が勃発し、第二次大戦の終結後は朝鮮戦争が激しく戦われた。いずれも日本、中国、ロシア、そして米国と、朝鮮半島に利害を持つ周辺の四大国の思惑がこの地域の動向を決定付けたのである。北朝鮮と韓国の関係だけでは、朝鮮半島を論ずることはできない。
朝鮮半島はいまも、北朝鮮の政権延命をかけた「核外交」に揺れている。1994年にワシントンと平壌の間で交わされた核問題の解決合意から約10年が経った。前回との最大の違いは、中国が新しい当事者として関与していることである。それが2003年から始まった6カ国協議(南北朝鮮、米国、日本、ロシア、中国)である。中国政府はそのホスト国として、首都北京を会議の舞台に提供している。
ブッシュ政権の狙いは、クリントン政権の北朝鮮政策の反省を踏まえて、中国政府を北朝鮮との話し合いのブリッジにして、彼らに北朝鮮の核が東アジア地域全体のパワーバランスを狂わせる危険性があり、それは中国の国益にプラスではないと警告することで、東アジアの安定にコミットさせることにある。
朝鮮の安定――それは周辺の関係大国の安全保障のリトマス紙である。
米国の中国認識の変化
2001年1月20日、ブッシュ政権が誕生した。ホワイトハウスの主人となったブッシュ大統領の中国観は、当時のライス大統領補佐官の言葉を借りれば、「戦略的ライバル」というものだった。ブッシュ共和党は大統領選挙中から、中国を「戦略的パートナー」と呼ぶ、クリントン民主党政権を攻撃し、対中強硬姿勢を明らかにしていた。政権発足当時に発生した海南島での米軍機の緊急着陸事件や台湾に対する外交的コミットメントからも、政権の対中強硬姿勢はうかがわれた。
だが、2002年9月11日に勃発したニューヨーク世界貿易センタービルへの大規模テロが米国の国際戦略を転換させ、対中外交も一変させた。
「9・11事件の前、ブッシュ政権の中国政策は新保守主義思想の影響を深く受け、中国政策の2つの柱『接触と対抗』のうち、対抗の方に比重がかかっていた。すなわち中国を戦略的ライバルと位置づけ、米国の軍事力を強化し、アジア太平洋の諸国家との軍事的協力を通じて、中国を封じ込めようとするものだった」
中国外務省のシンクタンク・国際問題研究所の発行する季刊誌「国際問題研究」のなかで、張立平研究員は「米国の中国戦略の基本的考え」と題してこう指摘する(2003年第3期)。論文のなかで張氏は米国の中国政策には3つの流れがあるとし、それを
①自由主義
ジョセフ・ナイ国務次官に代表される中国との全面接触を主張する考え方である。
②現実主義
米国の政治エスタブリッシュメントを中心とした戦略論で、代表的な人物はキッシンジャー元国務長官やブレジンスキー元大統領補佐官らである。
③新保守主義
ブッシュ政権を誕生させた宗教右派を含めた対中強硬派グループを指す。
――に分類する。
だが、9・11事件を経て、米国の政策は変わった。
「9・11事件の後、ブッシュ政権の中で新保守主義の対中政策に対する影響力は低下し、現実主義と自由主義的思考が強まった。対中国『接触』が拡大し、両国の協力の範囲は拡大した。それは以前からあった経済貿易関係に加え国際的反テロリズム、反核拡散闘争など安全保障の分野にも広がったのである」(同上)
(つづく)
すでに第4回6カ国協議は共同声明を採択して閉幕しているので、この論文が書かれた当時と現在の情勢は異なりますが、北朝鮮を巡る米中の思惑という点については独自の視点で描かれています。今後の米中関係を観察するうえで一つのヒントになるのではないでしょうか。
特集=朝鮮半島への新たな視点から
「北朝鮮を巡る米中の合従連衡」
青木直人(ジャーナリスト)
はじめに
朝鮮問題は国際関係問題でもある。
朝鮮半島情勢を歴史的に振り返れば、近代に入ってからも日清戦争、日露戦争が勃発し、第二次大戦の終結後は朝鮮戦争が激しく戦われた。いずれも日本、中国、ロシア、そして米国と、朝鮮半島に利害を持つ周辺の四大国の思惑がこの地域の動向を決定付けたのである。北朝鮮と韓国の関係だけでは、朝鮮半島を論ずることはできない。
朝鮮半島はいまも、北朝鮮の政権延命をかけた「核外交」に揺れている。1994年にワシントンと平壌の間で交わされた核問題の解決合意から約10年が経った。前回との最大の違いは、中国が新しい当事者として関与していることである。それが2003年から始まった6カ国協議(南北朝鮮、米国、日本、ロシア、中国)である。中国政府はそのホスト国として、首都北京を会議の舞台に提供している。
ブッシュ政権の狙いは、クリントン政権の北朝鮮政策の反省を踏まえて、中国政府を北朝鮮との話し合いのブリッジにして、彼らに北朝鮮の核が東アジア地域全体のパワーバランスを狂わせる危険性があり、それは中国の国益にプラスではないと警告することで、東アジアの安定にコミットさせることにある。
朝鮮の安定――それは周辺の関係大国の安全保障のリトマス紙である。
米国の中国認識の変化
2001年1月20日、ブッシュ政権が誕生した。ホワイトハウスの主人となったブッシュ大統領の中国観は、当時のライス大統領補佐官の言葉を借りれば、「戦略的ライバル」というものだった。ブッシュ共和党は大統領選挙中から、中国を「戦略的パートナー」と呼ぶ、クリントン民主党政権を攻撃し、対中強硬姿勢を明らかにしていた。政権発足当時に発生した海南島での米軍機の緊急着陸事件や台湾に対する外交的コミットメントからも、政権の対中強硬姿勢はうかがわれた。
だが、2002年9月11日に勃発したニューヨーク世界貿易センタービルへの大規模テロが米国の国際戦略を転換させ、対中外交も一変させた。
「9・11事件の前、ブッシュ政権の中国政策は新保守主義思想の影響を深く受け、中国政策の2つの柱『接触と対抗』のうち、対抗の方に比重がかかっていた。すなわち中国を戦略的ライバルと位置づけ、米国の軍事力を強化し、アジア太平洋の諸国家との軍事的協力を通じて、中国を封じ込めようとするものだった」
中国外務省のシンクタンク・国際問題研究所の発行する季刊誌「国際問題研究」のなかで、張立平研究員は「米国の中国戦略の基本的考え」と題してこう指摘する(2003年第3期)。論文のなかで張氏は米国の中国政策には3つの流れがあるとし、それを
①自由主義
ジョセフ・ナイ国務次官に代表される中国との全面接触を主張する考え方である。
②現実主義
米国の政治エスタブリッシュメントを中心とした戦略論で、代表的な人物はキッシンジャー元国務長官やブレジンスキー元大統領補佐官らである。
③新保守主義
ブッシュ政権を誕生させた宗教右派を含めた対中強硬派グループを指す。
――に分類する。
だが、9・11事件を経て、米国の政策は変わった。
「9・11事件の後、ブッシュ政権の中で新保守主義の対中政策に対する影響力は低下し、現実主義と自由主義的思考が強まった。対中国『接触』が拡大し、両国の協力の範囲は拡大した。それは以前からあった経済貿易関係に加え国際的反テロリズム、反核拡散闘争など安全保障の分野にも広がったのである」(同上)
(つづく)
これは メッセージ 218308 (kyabaajp さん)への返信です.