金王朝を崩壊に追いつめる⑥
投稿者: komash0427 投稿日時: 2005/07/03 07:53 投稿番号: [207467 / 232612]
瓦解を持つ意味
しかし、北朝鮮政府の改革忌避は、金正日体制の瓦解を遅らせることができることだけである。その瓦解は90年代の初めから自然発生的に起こっており、今ではすでにかなり進行している。平壌の若者たちは韓国のテレビドラマを見て、ソウルのモードを真似しようとしている。若い平壌市民の間ではソウル流の言葉遣いが次第に流行するようになっている。10年ほど前には、韓国の歌を公然と歌えば牢獄が待ち構えていたのだが、その韓国の歌も流行っている。そうした状況は、若者の「ジーンズ」やロックに対する崇拝と、政府のプロパガンダに対する無関心の増大が顕著となった後期ブレジネフ時代のソ連を大いに連想させる。
96〜99年の飢饉は、スターリン主義的経済を完全に破壊した。その復興は今ではほとんどおぼつかないだろう。人々はささやかな商売と手工業に携わっている。正式の賃金では、配給切符で品物を入手するのには足りても、市場での買物にはまったく足りないからである。農民は無断で自衛農地を利用し、都市住民は物資と食品との交換に携わっている。他方、労働者や役人は国営工場の用具の横流しを盛んにしはじめた。はじめのうち政府は「反社会主義的な現われ」と闘うという運動を組織して「秩序維持」を図ったが、96年頃には諦めた。今では大部分の北朝鮮国民は、形式的には国営企業の労働者や事務員ではありながら、手工業や市場での商売や小規模事業で生計を立てている。
中国国境を越える人と商品の移動は事実上無統制となり、北朝鮮当局は国境を閉鎖することができない(その力もなく、政治的意思もない)。飢饉が頂点に達した90年代の終わり頃には、20万人から25万人の北朝鮮難民が中国にいた。その多くは後に帰国したが、密輸商人になっても定期的に越境して商品を運んでいるものもいる。中国への出稼ぎも当たり前になってきている。
そのすべては、北朝鮮が早晩最期を迎えることを意味している。北朝鮮の行く手を待ち受けているのは、ソウルで現在大いに期待しているような、ゆっくりと何十年にもおよぶ変化などではない。改革は体制の終わりを早めるだけであるが、頑なな改革拒否もその瓦解をおしとどめることはできないだろう。
北朝鮮の崩壊と韓国による吸収を防止する唯一の外部の力は、現在では中国である。北京が北朝鮮の危機に介入し、平壌で中国に従属する半傀儡政府を権力の座に据えようとすることもなくはない。中国は独立した北朝鮮国家の存続を力で確保することで、政治的安定の条件のもとで改革を実現することができる。北京からすれば、北朝鮮は地政学上の緩衝地帯として不可欠である。しかし、中国政府のその決断は、系統的に多額の資金投資を必要とする。また朝鮮問題に対する直接介入は、おそらくその地域での信望を中国にもたらさないだろう。さらに、南北を問わず朝鮮人は、朝鮮半島分断の持続や未来の北朝鮮体制の愚かな行為について、北京に責任があると考えるだろう。
アメリカが事態にどのように影響を与えうるかは不明である。北朝鮮への直接的武力介入は公然たる冒険で、その可能性はきわめて小さい。
他の諸大国についていえば、北朝鮮の事態の展開に影響を与える可能性は更にずっと限られている。
ロシアは、近年の声高な声明や外交ジェスチュアにもかかわらず、ずっと以前から平壌に影響を与える梃子を失っている。モスクワと平壌との間では現在両国の雪解けが誇示されているが、そのことはモスクワが北朝鮮の政治に何らかの影響を与える力を持っているという印象を世界に与えて、その印象を、別の、アメリカ、日本、韓国との外交駆け引きに利用する必要があるということからきている。モスクワと平壌との接近の全体は事実上単なるジェスチュアのやりとりにすぎず、その裏にはいかなる実質的内容もない。平壌に本格的に影響を与えることができるのは、資源や援助を提供する場合だけであるが、ロシアにそのつもりはない。
(つづく)
しかし、北朝鮮政府の改革忌避は、金正日体制の瓦解を遅らせることができることだけである。その瓦解は90年代の初めから自然発生的に起こっており、今ではすでにかなり進行している。平壌の若者たちは韓国のテレビドラマを見て、ソウルのモードを真似しようとしている。若い平壌市民の間ではソウル流の言葉遣いが次第に流行するようになっている。10年ほど前には、韓国の歌を公然と歌えば牢獄が待ち構えていたのだが、その韓国の歌も流行っている。そうした状況は、若者の「ジーンズ」やロックに対する崇拝と、政府のプロパガンダに対する無関心の増大が顕著となった後期ブレジネフ時代のソ連を大いに連想させる。
96〜99年の飢饉は、スターリン主義的経済を完全に破壊した。その復興は今ではほとんどおぼつかないだろう。人々はささやかな商売と手工業に携わっている。正式の賃金では、配給切符で品物を入手するのには足りても、市場での買物にはまったく足りないからである。農民は無断で自衛農地を利用し、都市住民は物資と食品との交換に携わっている。他方、労働者や役人は国営工場の用具の横流しを盛んにしはじめた。はじめのうち政府は「反社会主義的な現われ」と闘うという運動を組織して「秩序維持」を図ったが、96年頃には諦めた。今では大部分の北朝鮮国民は、形式的には国営企業の労働者や事務員ではありながら、手工業や市場での商売や小規模事業で生計を立てている。
中国国境を越える人と商品の移動は事実上無統制となり、北朝鮮当局は国境を閉鎖することができない(その力もなく、政治的意思もない)。飢饉が頂点に達した90年代の終わり頃には、20万人から25万人の北朝鮮難民が中国にいた。その多くは後に帰国したが、密輸商人になっても定期的に越境して商品を運んでいるものもいる。中国への出稼ぎも当たり前になってきている。
そのすべては、北朝鮮が早晩最期を迎えることを意味している。北朝鮮の行く手を待ち受けているのは、ソウルで現在大いに期待しているような、ゆっくりと何十年にもおよぶ変化などではない。改革は体制の終わりを早めるだけであるが、頑なな改革拒否もその瓦解をおしとどめることはできないだろう。
北朝鮮の崩壊と韓国による吸収を防止する唯一の外部の力は、現在では中国である。北京が北朝鮮の危機に介入し、平壌で中国に従属する半傀儡政府を権力の座に据えようとすることもなくはない。中国は独立した北朝鮮国家の存続を力で確保することで、政治的安定の条件のもとで改革を実現することができる。北京からすれば、北朝鮮は地政学上の緩衝地帯として不可欠である。しかし、中国政府のその決断は、系統的に多額の資金投資を必要とする。また朝鮮問題に対する直接介入は、おそらくその地域での信望を中国にもたらさないだろう。さらに、南北を問わず朝鮮人は、朝鮮半島分断の持続や未来の北朝鮮体制の愚かな行為について、北京に責任があると考えるだろう。
アメリカが事態にどのように影響を与えうるかは不明である。北朝鮮への直接的武力介入は公然たる冒険で、その可能性はきわめて小さい。
他の諸大国についていえば、北朝鮮の事態の展開に影響を与える可能性は更にずっと限られている。
ロシアは、近年の声高な声明や外交ジェスチュアにもかかわらず、ずっと以前から平壌に影響を与える梃子を失っている。モスクワと平壌との間では現在両国の雪解けが誇示されているが、そのことはモスクワが北朝鮮の政治に何らかの影響を与える力を持っているという印象を世界に与えて、その印象を、別の、アメリカ、日本、韓国との外交駆け引きに利用する必要があるということからきている。モスクワと平壌との接近の全体は事実上単なるジェスチュアのやりとりにすぎず、その裏にはいかなる実質的内容もない。平壌に本格的に影響を与えることができるのは、資源や援助を提供する場合だけであるが、ロシアにそのつもりはない。
(つづく)
これは メッセージ 207466 (komash0427 さん)への返信です.