天声人語4
投稿者: isashi1243 投稿日時: 2003/02/22 09:55 投稿番号: [28 / 52541]
2003,02,04
一人の政治家が2日、舞台を去った。登場したときの熱狂からは遠いひっそりとした退場だった。チェコの大統領だったV・ハベル氏である。獄中生活も送った反体制の活動家で劇作家の彼が大統領に就任したのは、共産主義体制が崩壊した89年の「ビロード革命」によってだった。
「自分にはそんなつもりはまったくなかった。運命が奇妙な冗談を仕掛けたのだった」と彼は後に語っている。劇作家だから当然とはいえ、近年、彼ほど言葉を大事にした政治家はまれだろう。その華麗な言葉をたどっていくと様々な苦悩を読みとることもできる。
従来の政治家とは異質の政治をすることを宣言した彼だが、92年のパリでの演説ではいらだちも感じられる。ベッケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を引く。2人の男が、永遠にやってこないゴドーという何者かを待ち続ける話である。
この演説で「私はまったく耐えることをしなくなった人々の国からやってきました。彼らはあまりに長くゴドーを待ったので、ついにゴドーが来たと錯覚している」と。すぐに成果を求める国民の性急さを語った。
「あれから5年」と言う95年の文章では、体制が変わっても人間は簡単には変わらないことを語る。旧体制下で人々は抑圧されていたが、同時に安住もしていた、と。それに慣らされてしまった国民を変えることの難しさに言及した。
シナリオ通りに運ばなかったことが多いようだ。政治家としての彼への評価も割れるだろう。しかし、名せりふを残した名優が舞台を去る寂しさを禁じえない。
これは メッセージ 27 (isashi1243 さん)への返信です.
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