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「爺の剣」 - (5)by直子

投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2008/06/21 02:25 投稿番号: [165743 / 196466]
爺の道場に足が遠くなった理由がもう一つあります。祖母が亡くなる少し前、私は祖母の枕元に呼ばれました。大姉さんも同席しておりました。祖母は重い病気にもかかわらず、髪をきちんと結い、お布団の上に正座して私を待っておりました。そして、とても驚くことを私に話してくれたのです。祖母の次女、すなわち私の母の出生の秘密でした。

祖母の旦那様は、長女の大姉さんがお生まれになってまもなくお亡くなりになられたため、生活のために花街に戻って何年か経ったとき、初恋の人と宴席で偶然出合ったとのことです。その初恋の人は、戦争で南方へ行き、終戦になっても戻らなかった、連絡もなかった、生死すら分からなかったとのこと。ついに祖母は、周囲の圧力に負け、他の人と結婚してしまった。でも再会した時は、その人にも奥様がいてなんともしようがなかった、と言って涙ぐみました。祖母の初恋の人、それは爺でした。

そして祖母は「爺は、お前の母親、好枝の実の父。だからお前は爺の実の孫娘じゃ」といいました。それはそれはびっくりいたしました。祖母は、枕元の手文庫を私に差し出しました。中には、爺からの手紙や書類がぎっしり入っておりました。そして祖母は、その数日後に亡くなりました。

爺は、そんな私をまるで無視、他人のように扱っておりました。病弱の奥様がいらっしゃいましたから、しかたがないとは思っても、もう以前のように爺と接することが出来ませんでした。私の初恋の人、爺の息子さんの邦夫さんも私の叔父様になってしまいました。

もう剣道もやめようと思っておりました。そんなとき、爺がお店に来たのです。

約束の時間は、夜の8時でした。30分ほど前に道場へ行きました。電気が光々と点いており、床は綺麗に雑巾がけしてありました。でも、誰もおりません。着替えて、ひととおりストレッチと素振りを終えて、時計を見ましたら8時です。すると道場の奥の戸が開いて、道着姿の高木師範と防具を着け、面と竹刀を小脇に抱えた爺が入ってきました。爺は私をチラリと見ただけで、正座するとすぐに面を着けはじめました。私もあわてて面を着けました。私が面を着けている間、高木師範がこれから行う試合のことを説明してくれました。「三番勝負」とは、三日三晩にわたるそれぞれ一本勝負で制限時間なしということでした。


「一日目」

爺はあの年齢ですから動作が緩慢に違いない、私はここ一瞬の素早い打ち込みが得意でしたから、爺だからといって特に緊張しませんでした。まず精神を集中させました。神前とお互いに立礼し、竹刀を脇に抱えて遠間の間合いまで歩み寄り、構えます。蹲踞はしません。私は爺より早く正眼に竹刀を構えました。爺はまだ構えませんでしたが、私が構えるとそこで歩みを止めました。爺は私より少し背が高く飄々としていて、圧迫感はありません。威圧するような視線もありません。爺もゆっくりと竹刀を構えました。

不思議な構えです。爺の剣先は私の中心ではなく、私の左腿あたりにあって、面ががらあきです。やや下段の変則的な構えでした。私が指導で子供たちに面を打たせるときの構えに似ています。「あっ、面を誘ってる」と思いました。

<続く>
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