日中関係

Yahoo! Japan 掲示板トピックビューアー

[ << 最初のページ | < 前のページ | メッセージリスト | 掲示板表示 | [ メッセージ # ] | 次のページ > | 最後のページ >> ]

「爺の剣」 - (4)by直子

投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2008/06/21 01:59 投稿番号: [165742 / 196466]
そんなとき、爺がめずらしくお店にお一人でいらっしゃって、私の目をじいっと見ると、いきなり「儂と三番勝負せぬか?」と言うんです。

たった一度だけですが、夜遅く何かの用事で爺の家に行ったとき、道場から「エィ!」という鋭い気合いが聞こえてきました。気になって道場を覗きますと、薄暗い道場の中で爺が真剣でひとりで演武しておりました。でもよく見ると、道場の隅で高木師範が正座して爺の演武をジッと見ております。私は、爺に用事があって来ましたので、しかたなく爺の演武が終わるまでと思い、勝手に道場に入って、入口で正座して待ちました。

爺の演武は大変不思議でした。居合いでもありません。変化自在に動いています。まるで、周囲の見えない大勢の敵と立ち合っているようでした。爺は、道場に入ってきた私を気にも止めません。とうに気付いているくせに、です。高木師範も私にチラッと視線を向けると、また爺の演武に見入っております。

やがて爺は腰の脇差も抜くと、そのままダラリと身体の前に構えました。いえ、大小二本ともダラリとぶらさげているという感じです。この立ち姿、どこかで見覚えがあります。そうです、宮本武蔵が晩年に描いたあの自画像そっくりな立ち姿なのです。

爺は、しばらくそのままでしたが、やがて静かに流れるような歩み足で前進すると、二刀をゆったりと振りました。いえ、見えない何かを斬っているようです。

私は、それまで爺と稽古したことがありません。私が知るかぎり、爺が誰かと稽古している姿を見たことがありません。高木師範とも稽古している姿を見たことがありません。

現在の竹刀剣道、打突剣道では、歩み足は悪い足運びだとされています。剣先で相手を攻めることもいたしておりません。その時、私はこの爺の演武は基本を無視した演武だと思いました。

どのくらいたったのでしょうか、やがて爺は神前で一礼をすると、高木師範に声をかけるでもなく、無言でそのまま道場の奥へと入って行ってしまいました。

「おう、来ていたか、何か用事かな?」

このときになって初めて、高木師範が私に声をかけてくださいました。でも私は、何か見てはいけないものを見てしまったような気分に襲われてしまいました。

爺から「儂と三番勝負せぬか」と言われて、思わずこのときの爺を想い出したのです。

<続く>
[ << 最初のページ | < 前のページ | メッセージリスト | 掲示板表示 | [ メッセージ # ] | 次のページ > | 最後のページ >> ]

Yahoo! Japan 掲示板 アーカイヴ

[検索ページ] (中東) (東亜) (捕鯨 / 捕鯨詳細)