ソウル15
投稿者: k_g_y_7_234 投稿日時: 2006/11/14 19:39 投稿番号: [6682 / 73791]
その数、数十機であろうか。我々目指して一目散に飛んでくる。
儂が命令するでもなく、部下の何人かが叫びながら兵舎へ走った。すぐに兵舎の兵たちは飛び出してきた。持ち場に向かう者、ヤシ林の防空壕に向かう者、軍服を抱えて半裸で走っておる者もいる。じつに素早い。我隊は戦闘機相手ではやることがないから、防空壕へ走った。防空壕といっても、穴を掘っただけの粗末なもので、直撃弾を受けるとひとたまりもないしろものである。ただ、ヤシ林が格好の隠れ蓑となっておった。
儂は部下が止めるのも聞かず、ヤシの幹に身体を寄せるようにして敵機を見ておった。数十機とはいえ、まるでハチの大群が押し寄せてきたかのようである。数問しかない我方の対空機関銃音も聞こえてきたが、まったくあたらん。敵機は縦隊で侵入してくると次々に爆弾を落とした。無人の兵舎は、瞬く間に木っ端微塵に吹っ飛んだ。先頭の敵機は、すぐに反転してきて、今度はむやみやたらと機銃掃射をあびせてくる。敵機は実に速い。歩兵銃で撃っておる者もいたが、鉄砲の弾より速く見えるから不思議である。
そのとき、硝煙の中からひとりの兵隊が向こうのヤシ林に向かってよたよた走っているのが目に入った。一升瓶を何本か両腕で抱えておる。山下であった。山下は実に足がのろい。おまけに持てるだけの一升瓶を抱えておるから、走りにくそうである。
「逃げろぉ〜、山下ぁ〜!」
いつの間にか儂の周りにきておる部下たちのひとりが叫んだ。しかし、爆音や機銃音で聞こえんらしい。
「瓶をすてろぉ〜!」
今度も聞こえんらしい。そのとき、山下の背後へ敵機が舞い降りるのが見えた。
「ふせろぉ〜、山下ぁ〜!」
すぐに機銃が火を噴いた。山下はつまずくように転んだ。その間わずか一、二秒である。
「やられたか?」
「いや、大丈夫だ..」
山下はもそもそ起きあがると、今度は地面に転がった一升瓶を拾い始めている。
「バカヤロぉ〜、はやくにげろ!」
ひとりの兵隊が儂のそばから飛び出した。例の夫婦漫才の相方の兵である。彼が山下にもうすぐ届こうというとき、「ヒュー」という不気味な音が頭上で聞こえた。
「ふせろぉ〜!」
古参兵のひとりが叫ぶ間もなく、我々は伏せた。
舞い上がる土誇りの中で二人の身体が宙にもんどりうつのが見えた。とっさに、儂は彼らに向かって飛び出しておった。後から部下達も走ってきたが、二人とも地面にころがったまま動かん。山下は血だらけで、両足がももからない。腹からは腸がはみだしておる。ヤシ林まで運んだが、山下は即死。相方はとみると、頭皮が垂れさがって真っ白な頭蓋骨がむき出し。片足は、あらぬ方に反り返っておった。
爺
これは メッセージ 6587 (k_g_y_7_234 さん)への返信です.
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